卵とソフトなパン作り【卵の効果と注意点について】

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パン作りにおける卵の役割を中心に次のような疑問を解決します。卵を入れるメリットだけでなく、使用上の注意点についても詳しく解説しています。特に、ソフトでしっとりしたパンを焼きたい方にとっては活用できる内容になっているので、ぜひ一読ください。

    • パンにたまごを入れるとどんな効果があるの?
    • たまごを入れるさいの注意点は?
    • つや出しの塗玉(ぬりたま)とは?注意点は?
    • 塗玉以外でつやを出すには?

 

 

 

 

1.たまごの効果



パン生地にたまごを配合することで、大きく5つの効果があります。特に、卵黄はパン作りにおいて重要です。

  1. パンの栄養を強化する

  2. 生地をなめらかにする
    たまごに含まれるレシチンは、天然の乳化作用があり生地をなめらかに、ソフトにします。

  3. パンの老化をおくらせる
    たまごのレシチンの効果で、パンの日持ちがよくなります。ただし卵白はパンをパサつかせるので、全卵の入れすぎには注意。詳細は「2.たまごの使用量の目安と注意点」を参照ください。

  4. パンの色つきをよくする
    たまごを対粉5~8%いれると、パンの内相(パンをスライスしたときの断面)の色が黄色になり、おいしそうに見えます。

    また、焼成前にパンの表面にたまごを塗る(塗玉)ことで、焼き上がりのパンの表面がつややかになり、色付きもよくなります。

  5. パンの風味・窯伸びをよくする

 

■ パン作りでは、卵黄が重要
パンのやわらかさや、日持ちをながくする効果があるのは、卵黄に含まれる「レシチン」という脂肪のおかげです。

たまご感のあるやわらかいパンを作りたいときは、全卵ではなく卵黄を使うとしっとり仕上がります。例えばたまごの量が多いブリオッシュは、全卵もいれますが、卵黄もたっぷりいれます。

お菓子作りでは、卵白を泡立ててその気泡でパンを膨らませますが、パンにとってはほぼ不要なので卵黄量をふやしたほうがおいしく仕上がります。
 
 
 

1-1.たまごの栄養成分



たまごは、とても栄養価が高い食材なので、パン生地に配合することでパンの栄養を強化することができます。

たまごの栄養価はつぎのとおりです:

  1. 水(75%)
  2. たんぱく質(12.7%)
    特に必須アミノ酸(リジン、メチオニン、トリプトファン)が豊富。
  3. 脂肪(11.2%)
    レシチン、リポタンパク(脂質とたんぱく質が結合したもの)、コレステロール。これらは天然の乳化剤なのでパン作りではとても重要。
  4. ミネラル(1.1%)
    リン、鉄、
  5. ビタミン
    A,D



1-2.卵黄でしっとりパンを作る



全卵を入れるより、卵黄を入れたほうがパンがよりしっとりソフトに仕上がります。

なぜなら、たまごの黄身に含まれているリポタンパクとレシチンは天然の乳化作用※があり、生地に次のような効果があるからです:

  1. なめらかにする
  2. ソフトにする
  3. クラム(パンの内相)を均一にきめ細かくする
  4. 機械耐性と作業性を向上させる
    生地がべたつきにくくなるので、特に工場などでは生地を機械に通しさすくなります
  5. しっとりさせ、老化をふせぐ
    パンのフレッシュさをキープさせ、日持ちさせる



■ 配合量について

あくまでも目安ですが、全卵のレシピを卵黄に置き換えて作りたい場合、卵白のかわりに水を増やして生地の水分量を調整したほうが安全です。

  1. 卵白は88%が水なので、その分、水をふやします。

  2. 一般的なMサイズのたまごの重さは、
    全卵:約60g
    卵黄:約20g
    卵白:約40g

  3. なので、40×0.88=35.2 g水を増やします。あとは捏ねながら生地の硬さをみて調整しましょう。

 

■ ※乳化作用とは

乳化作用とは、本来まじりあわない物質を均一に混合させることを言います(例えば水と油など、マヨネーズの酢と油)。

パンに添加される場合は、生地をなめらかにさせて機械耐性をあげる、やわらかくふくらむパンにする、きめ細かいしっとりとしたパンにする等の効果をねらっています。

たまごのレシチンは天然の乳化剤といわれ、パンをやわらかく、しっとり、きめ細やかにする効果があります。
 
 

 

1-3.塗玉の方法とコツ:パンに美しいつやをだす



塗玉(ぬりたま)とは、焼成前にパンにといた卵を塗ることです。これにより、パンに焼き色が付きやすくなり、とてもつやつやした見た目になります。

下の写真は形はちがいますが、同じ生地でつくったパンです。丸いほうには塗玉を、コッぺパンのほうは霧吹きだけして焼きました。同じ生地でもこれだけつやが違ってきます。

【↓塗玉あり】


【↓塗玉なし(霧吹きのみ))
 


■ 美しいつやを出すためのコツと注意点:

  1. 塗玉をする前に生地の表面を乾かす
    湿った生地に塗玉をすると、はけが生地表面にひっかかり、生地表面のガスがぷくっと膨れることがあります(あるいはしぼんでしまう)。これは生地がはけにまけて、ガスが生地のグルテン構造がよわいところへ集中してしまうからです。結果そこだけが焼成時にふくれて、写真のように火ぶくれします。それを避けるために、生地は手でさわっても大丈夫なくらい乾かしましょう。



  2. やわらかいはけを使う
    上記の理由とかさなりますが、生地の表面を傷つけないように、やわらかいものを使うのがおすすめです。
    ☞参考記事(おすすめのはけを紹介しています):パン作りに必要な道具6選【おすすめ・初心者向け】「はけ」

  3. 生地全体に均等に塗玉をする
    生地全体に、うすく均等に塗玉します。塗りむらができると、下写真のように見た目が残念になります。特にパンの側面や下のほうは塗りにくくむらができやすいので、天板を回転させるなどして、焼成前にパンを360℃見てみましょう。

    【↓パンの側面が塗れていない】


  4. たっぷり塗らない
    卵を塗りすぎてしまうと、オーブンで卵が乾燥する前に、卵がパンの底まで垂れてしまい、パンの底に卵焼きができてしまいます。またその部分が焦げやすいので見た目も味的にもよくないです。

  5. つや感をアップさせたいなら、重ね塗りする
    一度でたっぷり塗ってしまうと、前述したとおりパンの底に卵焼きができてしまいます。なので、一度塗ったらかわかして、かわいたら再度塗る方法がおすすめです。ただ、この場合もしっかり表面を乾かすこと。そして、重ね塗りする時間を計算し、最終発酵の時間を調整して発酵オーバーにならないよう注意しましょう。

 

 

【番外編】塗玉ではなく牛乳でつや出しする



■ 塗玉の代用としておすすめなのは、牛乳
一方で、なかには塗玉のつやっつや感がすこし苦手という意見もあります。でもつやがまったくないのも地味という方には、牛乳を焼成前に塗るのがおすすめです。なぜなら、

  • びみょうにつやが出せる。ぎらぎらしていないナチュラルな仕上がりになる
  • 卵アレルギーに配慮したパンが作れる
  • 余らせる心配がない(塗玉のためだけに卵を割ると余ってしまいがち)

    自分が作りたいパンの見た目や、目的に合わせて、使い分けていただければと思います。

 

2.パン作りでは、Sサイズの卵がおすすめ



一般的に、大きいサイズのたまごのほうが卵白の比率が多くなります

  • 卵白を使いたい場合はLサイズのたまごを使う
  • 卵黄を使いたい場合はSサイズのを使うと◎。
  • パン作りにおいては、卵黄をできれば入れたいので、Sサイズの利用をおすすめします。
  • 逆にメレンゲやシフォンケーキを作りたい場合は、大きいLサイズを使ったほうが効率的になります。

 

3.たまごの使用量の目安・注意点

 

  1. たまごは、対粉10%はいれる(=ベーカーズパーセントで10%)
    たまごは75%が水分なので、レシピには10%以上はいっていないと効果が得られにくい。
    【例】強力粉250gのレシピの場合は、たまごを25g以上いれる

  2. 卵白はパサつきの原因:対粉30%以上いれる場合は、卵黄を使う
    たまごは30%以上いれると生地のつながりを弱くします。また、卵白のたんぱく質は熱を加えると、かたまる(凝固作用)ので全卵(卵白)の入れすぎは、パンをパサつかせてしまいます。なので、30%までは全卵、それ以降は、卵黄を入れましょう。

  3. 吸水を減らす
    たまごは、75%が水分なので、仕込み水をたまごの6~7割ほど減らして調整しましょう。

  4. よくといてから使用する
    まれに、黄身だけが固まり、生地のなかにのこってしまうことがあります。

  5. 発酵時間に注意する
    たまごが入った生地は、発酵時間が長くなるとたまごのたんぱく質の変性で臭いがでることがあるので要注意。特に夏場などは高温の場所で必要以上に発酵させないように気を付けましょう。

    オーバーナイトの生地の場合(ブリオッシュ・菓子生地など)も冷蔵庫の温度が高くならないようにしましょう。

 

■ さらに詳しく:ベーカーズパーセントについて
パン屋では基本的に、配合表記はすべてベーカーズパーセントで統一しています。ベーカーズパーセントとは、小麦粉量を100%とし、ほかの材料の割合を対粉比で表したものです。

 

☞あわせて読みたい:
ベーカーズパーセントの計算方法について:
ベーカーズパーセントとは?【計算方法をやさしく解説】

 

 

4.まとめ

 

  1. たまごはパンに加えることで、パンをしっとりソフトにし、色つき、風味、窯伸びをよくする効果がある。

  2. 特にたまごの卵黄に含まれるレシチンやリポタンパク乳化作用があり、生地をなめらかにし、焼き上がりのパンのきめを細かく均一にする、しっとりさせる、日持ちさせるといった効果がある。

  3. 卵白(全卵)は入れすぎると、パンをパサつかせる作用があるため、対粉30%以上入れる場合は、全卵ではなく卵黄をいれる

  4. つや出しのための塗玉は、牛乳などである程度代用可能である。


 

 

5.最後に…



本記事では、パン作りにおける卵の効果、使用上の注意点、つや出し(塗玉)についてご説明しました。

やわらかくて、ソフトで日持ちするパンを作りたいのであればたまご(特に卵黄)を入れるのがおすすめです。卵黄がたっぷりはいったブリオッシュ(特に大きい型で焼くブリオッシュナンテール)は本当にしっとりしていて、くちどけがよく、無心でたくさんたべれます。あまり売っているお店がないのが難点。それでは、今日もパン作り楽しんでください:)



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