パン作りと小麦粉【強力粉、薄力粉、中力粉どれを使う?】

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パン作りに欠かせない小麦粉ですが、強力粉で作らないとダメなのか?薄力粉とどう違うのか?代替利用できないのかなど、レシピを見ながら迷っている方へ。パン作りを始める前に、ぜひ一読してください。小麦粉の種類や、使う小麦粉によってパンの仕上がりが、どのように変わるのかといった疑問を解決します。さっそく見ていきましょう:

 

結論を先にお伝えすると、

  1. 強力粉、中力粉、薄力粉の違いは、たんぱく質量。

  2. たんぱく質量が多いと、パンの骨格となる構造(グルテン)が作られる。グルテンが少ないと、パンは発酵ガスを保持できないので、膨らまない。

  3. 薄力粉は、強力粉の代替で使えない。たんぱく質量が少ないので、単体利用ではパンは膨らまない。

  4. 食パンや菓子パンには、強力粉 or 強力粉₊薄力粉の組み合わせが◎。

  5. バゲットなど「ハード系」は、準強力粉が◎。

 

目次

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1.小麦粉ってなに?




小麦粉は、その名の通り、小麦を粉砕した粉です。小麦の構造は下記の通り、表皮という、いわゆる、ブランやふすまと言われる皮で、覆われています。栄養素が多いので、よくシリアルや健康食品で利用されています。表皮の中には、胚乳(小麦粉になる部分)と胚芽があります。私たちがよくスーパーで見かける、白い小麦粉は、粉砕したあと、表皮と胚芽を取り除いた状態のものです。



1-1.小麦粉の栄養素と、パン作りとの関係



小麦粉に含まれる主な栄養素は、たんぱく質(8~12%)、でんぷん(70%)、と灰分(ミネラル)です。この中で、パンにとって欠かせないのが、小麦粉特有のたんぱく質、グリアジンとグルテニンです。

この2種類のたんぱく質が、水と加わり、捏ねられることで、別々だった両者が絡み合い、つながり、網目状の構造になります。この網目がグルテン構造で、ここに、イーストの発酵ガスが保持され、パンが膨らむのです。



 

☞関連記事:

グルテンについて、詳しくはこちらで図解しています:パンの発酵の仕組みと、発酵を左右する要因【わかりやすく図解】

ちなみに、小麦粉内のでんぷんは、糖分のかたまりなので、イーストの発酵のエネルギー源となります。
☞でんぷんとイーストに興味のある方は、こちらから:パンの発酵の仕組みと、発酵を左右する要因【わかりやすく図解】



1-2.小麦粉の分類①タイプ:たんぱく質量



小麦粉は、おおまかに、タイプ(たんぱく質量)とグレード(灰分量)に分類されます。まずは、タイプの分類から見ていきましょう。

上記のように、たんぱく質はパンの骨格を作るので、パンには欠かせません。そして、たんぱく質量に応じて小麦粉は、「強力粉」、「準強力粉」、「中力粉」、「薄力粉」のタイプに分類されます。強力粉が最も、たんぱく質量が多く、薄力粉が最も少なくなります。下記が、それぞれのたんぱく質保有量と、用途をまとめたものです。

※たんぱく質量は、「五訂増補日本食品標準成分表(本表) 穀類」をもとに作成。「準強力粉」の項目がなかったので、数値未記入だが、一般的には11%。

 

強力粉

準強力粉

中力粉

薄力粉

たんぱく質量(1等粉の値)

11.7%

9%

8%

主な用途

食パン、菓子パン

バゲット等のハード系のパン。クロワッサンやパイ生地

麺類、マドレーヌ・クッキー等の焼き菓子

ソフトなスポンジケーキやクッキー等のお菓子

文部科学省「五訂増補日本食品標準成分表(本表) 穀類」をもとに作成


強力粉が、最もたんぱく質保有量が多いので、グルテンが最もしっかり生成され、一番膨らみやすい生地が作れます。日本でのパン作りにおいては、基本的に強力粉で行います。「日本でのパン作り」という表現をしたのは、日本で好んで食される、食パンや菓子パンは、ふわふわボリューミーなものが好まれるので、きめ細かいグルテンが生成される、強力粉が一番向いているのです。


1-3.小麦粉の分類②グレード:灰分(ミネラル量)



もうひとつ、パンの分類で一般的に用いられるのが、グレード(灰分量)です。

グレード、はそれぞれのタイプ(強力粉、薄力粉etc)ごとに、1等粉、2等紛、3等粉、末粉に分類されます。1等粉が、一番灰分値が低く(ミネラル量が少なく)、色も明るい白色でくすみがほぼないです。

日本では、真っ白い食パンが好まれるので、灰分量が少ない粉が使われることが多いです。(最近では、健康志向で全粒粉やライ麦を利用したパンもじわじわブームになっていますが、白いパン人気は根強いと思います)。

下記が各等級のおおまかな灰分量です。

等級 灰分量(%)
1等粉 0.3~0.4% 明るい色(白に近い)
2等粉 0.5%前後  
3等粉 1.0%前後  
末子 2~3% 暗い色

等級が1から3になるほど、小麦のふすま(外皮)の部分が含まれるので色が濃くなります。同時に栄養価も高くなります。栄養価や、風味などを考えると、必ずしも、1等級のものが、いつでも一番よいというわけではありませんが、一番くせがなく、凡用性が高いので、生地が作りやすく、バリエーションも広げやすいと思います:)


1-4.★おまけ:強力粉と薄力粉の見分け方



例えば、パン作りの際、強力粉と薄力粉を両方軽量し、どちらがどっちだ...ということがもしあった場合、粉を握ると、すぐに見分けられます。

下写真のように、粉をぎゅっと握って、指の形がのこり、硬く固まるのが、薄力粉です。

一方、強力粉は、ぎゅっとした手を離したらすぐ、形が崩れサラサラし、固まりません。

これは、強力粉と薄力粉の原料となる小麦の性質の違いのためです。注目して頂きたいのは、「硬さ」と「粒質」です。

小麦の性質 強力粉 薄力粉
播種(ばしゅ)期 春小麦 秋小麦
粒色 赤小麦 白小麦
硬さ 硬質小麦 軟質小麦
粒質 硝子(ガラス)質 粉状質

強力粉は、薄力粉に比べて、硬くて、質感も硝子質で粒子が粗いです。なので、ぎゅっとにぎっても、粒子の間に隙間ができるので、固まりません。一方、薄力粉は粉状質で粒子が細かいので、握ると粒子同士が密着しやすく、固まります。握った感触が全然違くておもしろいので、ぜひ握ってみてください😊

 

2.パンに向いている、小麦粉は?



生地がパンになる前提として、グルテン構造の生成が不可欠なので、パン作りに向いている小麦粉の種類は、強力粉と准強力粉です。ただ、どのようなパンを作りたいかで、使う小麦粉のチョイスも下記のように、変わってきます。


2-1.どのパンには、どの小麦粉を使うべきか?



★ 食パン、菓子パンなら、強力粉が◎

★ バゲット・リュスティックなど、皮がバリバリして断面の大小の穴あきが特徴的なハード系は準強力粉が◎

★ 歯切れがよい、フォカッチャ・ピザ生地も准強力粉が◎

★ サクサク食感のクロワッサンも准強力粉が◎

菓子パンや食パンのように、ふわふわ、もちもち、やわらかいパンであれば、強力粉が◎です。グルテンの網目構造が緻密になることで、発酵ガスが均等に保持され、焼き上がりの断面がきめ細かく、ふわふわもちもちになりやすいです。また、パンの皮も薄くなりやすいです。

一方、パンの食感的にふわふわではなく、あっさり歯切れのよいフォカッチャ、ピザ生地、サクサク感を味わいたいクロワッサン、あるいは、リュスティックやバゲットみたいに、皮のバリバリ感を楽しみたい場合は、たんぱく質量が少なめの准強力粉が◎です。

※准強力粉は、スーパー等ではなかなか購入できないので、ご家庭で作るのであれば、強力粉と薄力粉を半々でまぜて代用することも可能です。購入できる場所は、こちらを参照ください。


2-2.強力粉を、薄力粉で代替できるのか?



残念ながら、代替はできません。薄力粉は、たんぱく質保有量が低いので、パンを膨らめせるために必要不可欠な、パンの骨格グルテンが生成されません。グルテンが生成されなければ、イーストの発酵ガスを生地が保持することができないため、パンは膨らみません。

薄力粉で練った生地は、いくら練ってもパン生地特有の、弾力と伸びがでません。薄力粉は、ケーキやクッキー等お菓子作りに向いている小麦粉なのです。

ただ、強力粉と併用して使える場合があります。2-1で記載したように、准強力粉が手元にない場合は、強力粉と薄力粉を半量ずつ混ぜて使うことで、代替可能です。あくまでも、強力粉のたんぱく質量をやわらげ、準強力粉のそれに近づけるための役割で入れているので、薄力粉単体では、使わないでくださいね。


2-3.パン向けの小麦粉は、どこで購入できる?



  • スーパー

強力粉や、薄力粉は、大体のスーパーで購入可能です。よく見かけるのが、日清製粉の、カメリヤ(強力粉)とフラワー(薄力粉)です。当ブログのレシピでも、この2種類の小麦粉を使っています。ちなみに、カメリヤは、わたしがパン屋で働いていたときも、使っていました。凡用性が高くて、ご家庭でも使いやすい小麦粉です。

  • 製菓製パン店

ただ、准強力粉は、スーパー等ではあまり販売されていないので、製菓製パン材料を扱うお店(富澤商店、CUOCA)での購入が◎です。種類もあるので、おすすめです。

  • ネット購入が確実

また、上記のお店は、ネットでも1kgから粉を購入できます。下記にリンクを記載します。

・富澤商店 
https://tomiz.com/category/1120
・CUOCA 
https://www.cuoca.com/fs/cuoca/c/1008


 

4.まとめ



  • パン作りにおいて、小麦粉のたんぱく質量が重要で、強力粉、中力粉、薄力粉によって保有量が異なる。たんぱく質が、パンの骨格となる構造(グルテン)を生成し、発酵ガスを保持して膨らむ。

  • 薄力粉は、強力粉の代替としての利用は不可。たんぱく量が少ないので、単体利用ではパンは膨らまない。ただ、強力粉と併用することで、準中力粉のような食感に近づけられる。

  • 使う小麦粉によって、パンの食感や見た目が大きく変わるので、作るパンの種類によって、小麦粉を使い分けるのが◎。

  • 食パンや菓子パンには強力粉、バゲット(ハード系)、ピザ、クロワッサンは、準強力粉が◎


5.最後に…


小麦粉の性質を知ることで、パン作りの幅が広がりますよね。強力、準強力、全粒粉等々。小麦粉以外にも、ライ麦、米粉、デュラムセモリナ粉等、粉の種類はいっぱい。食パンなど基本のパン以外にも、ぜひハード系やクロワッサンなどにも挑戦してみてくださいね。それでは、今日もパン作り楽しんでください:)

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コメント一覧 (2件)

  • 小麦粉の選定、実は製パン技能士実技試験の最初の関門です。ブログにアップして頂いている「手で触れて強力粉と中力粉を判別する」ところから始まります。(この解説、とても有意義ですね)
    ほとんどの受験生の皆さんはクリアーされるのですが、時々間違えてしまう方がみえます。
    小麦粉の粒度の違い(小麦の硬さの違いに由来している)を理解しておくとわかりやすいと思いました。

    • コメントありがとうございます!そうですね、手で握ったときの違いの理由を知っていれば、実技試験など緊張する場面でも冷静に判断できそうですね。

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