パンの発酵の仕組みと、発酵を左右する要因【わかりやすく図解】

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パンの発酵ってそもそも何?パンを作ってみたけど、なんか発酵がうまくいかない!でも、どこをどう改善すればよいかわからない…という方のために、パンの発酵の仕組み&発酵を左右する要因や材料を、丁寧に図解してます。

どのような生地状態の時に発酵が進んでいるのか・進んでいないのかに加え、個別の対処法やおいしいパンを作るコツを紹介します。

これからパン作りをはじめる方も、作り始めている方も、なにごとも基本が大事です。ぜひ一読し、おいしいパン作りの参考にしてくださいね:

発酵の仕組みが分かれば:

  1. パン作りの基本がわかり、どんどんおいしいパンが焼けるようになる
  2. 発酵の見極めができるようになる
  3. 発酵がうまくいかなかった時の対処法がわかるようになる
  4. 季節の変わり目でも安定したパン作りができるようになる
  5. 自分好みのパンを焼くことができるようになる!

それでは、早速みていきましょう↓↓  

※本記事で記載されている、イーストとはパン酵母のことを指します。

目次

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パンをふくらませる発酵の仕組みについて


発酵とは、イースト(パン酵母)が生地内の糖分を酵素の作用で分解し、アルコールと炭酸ガスを生成する一連の流れのことです。そして、この炭酸ガスが、生地の構造内(グルテン)によって包み込まれ、膨らむことで、おいしいパンが焼けます。

発酵は次の4つのステップで進みます:

  1. 小麦粉のでんぷんが、小麦粉内の酵素によって麦芽糖に分解される
  2. 麦芽糖はイースト内の酵素により、ガスとアルコールに分解される
  3. さらにイーストは砂糖(ショ糖)も分解し、ガスとアルコールを生成する
  4. 生成されたガスは、パンの骨格グルテンに包み込まれる。これにより、生地が膨らむ

では、それぞれのステップの詳細をみていきましょう:

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①小麦粉内のでんぷんが麦芽糖に分解される


 小麦粉のでんぷんについて

小麦粉内には、多くの栄養素が含まれていますが、発酵においては、でんぷんがとても重要です。

でんぷんとは、糖分が鎖のように連なった糖分の塊のことです。そして小麦粉内には、2種類のでんぷんがあります。

1つ目は“健全”なでんぷん。そして2つ目は、小麦を小麦粉へ加工する粉砕工程等で傷がついた損傷でんぷんです。

ちなみに、でんぷんのおよそ4%が損傷でんぷんで、この損傷でんぷんがのちに、イースト(パン酵母)のエネルギー源として活用されるため、発酵活動にとっては重要な存在なのです

■ 小麦粉の酵素について

小麦粉内には、でんぷんの他に酵素が含まれています。

この酵素は、アミラーゼと言い、先ほどの損傷でんぷんの糖分の鎖を、ちょきちょき切って分解していきます。アミラーゼによって分解されたでんぷんは、麦芽糖といい、イースト(パン酵母)の重要なエネルギー源になります。

小麦粉内の酵素による分解作業はここで終了し、麦芽糖はイーストに取り込まれていきます。

さらに詳しく:αアミラーゼとβアミラーゼについて

アミラーゼはαとβのコンビで働きます厳密には、小麦粉内にアミラーゼ酵素は、α(アルファ)とβ(ベータ)の2種類が存在し、でんぷんは2ステップで酵素の作用を受けます。

でんぷんはまず、αアミラーゼによってデキストリンに分解されます。そのあとβアミラーゼによって、麦芽糖に分解され、イースト(パン酵母)内に移動します。

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②麦芽糖はイーストによって分解される


小麦粉内のアミラーゼ酵素の作用で分解された麦芽糖は、イースト(パン酵母)の細胞膜を通過し、取り込まれていきます。そしてイースト内にある、マルターゼという酵素によって、麦芽糖はさらに小さく分解され、ブドウ糖(2個)になります。

分解されたブドウ糖は、次に、イーストのチマーゼという酵素の作用で、アルコール炭酸ガス(Co₂)になります。アルコールはパンの香りと風味の元になり、炭酸ガスは、パンの食感とふくらみの元となります。


さらに詳しく:そもそもイースト(パン酵母)って何?

パン酵母とは、自然界に存在している酵母のうち、パンの発酵に適した働きをする複数種の菌株のことを指します。

ちなみに、酵母(英語でYeast=イースト)は厳密には何百種類もの微生物の総称(アイドルで言うグループ名)です。そしてパン酵母は、グループ内のメンバーの1人という立ち位置です。ですが、パン関連業界では、「イースト」=「パン酵母」の意味で使われることが多いです。

つまり、総称(酵母=Yeast=イースト)を「パン酵母」の呼称として使用しています。

酵母はご存じの通り、ワインやビール等様々な発酵を促して私たちの食生活を豊にしています。パン酵母は、数多くある酵母(イースト)の中で、パンの発酵を最も得意とします。

ちなみに、スーパーなどでよく販売されているインスタントドライイーストは、パン酵母を自然界から切り離して純粋培養したものです。もともとは、自然に生息している生き物なのです。

■下記にさくっとパン酵母の特長を記載します:
✓ 37~38℃の温度帯で一番活性する菌
✓ 60℃以上で死滅
✓ 4℃以下で休眠(発酵活動をストップ)
✓ 酸素があれば呼吸をして増殖し、パン生地の中など酸素がない状況では、糖を炭酸ガスとアルコールに分解することでエネルギーを得て生きています。

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③さらにイーストは、砂糖の糖分も分解する


ところで、パンのレシピには、大体砂糖が含まれてますよね。砂糖こそまさに、糖分のかたまり!こちらも、イースト(パン酵母)の大事なエネルギー源になります。

砂糖は、ショ糖という糖分の塊です。ショ糖は糖分の鎖が、でんぷんよりも短いので、そのままイーストの細胞壁に存在する、インベルターゼという酵素によって、ブドウ糖と果糖に分解されます。分解されることで、この2つの糖はイーストの細胞の内部へと取り込まれていきます。

ちなみに、イーストの酵素は基本的にイーストの細胞内で作用しますが、インベルターゼだけ一部、例外的にイーストの細胞壁の外で作用します。

そして最後は、チマーゼの作用により、アルコールと炭酸ガスが生成されます。


上図のように、砂糖は小麦粉の糖分と違い、すんなりエネルギーとして利用できます

では、この生成されたガスたちはどこへいくのでしょう?

④生成されたガスをグルテンが取り込む


生成されたガスは、パンの骨格であるグルテン構造(小麦粉のたんぱく質が絡み合ってできた構造)に包み込まれます。例えるならグルテンが風船で、そこへ、イースト(パン酵母)のガスが発生することで風船がどんどんふくらみます。そして、ふくらみすぎたら最後は破裂します。(パンは発酵させすぎると「過発酵」になり、生地がしぼんでしまいます)。

グルテン構造は、小麦粉内に含まれるたんぱく質グリアジングルテニンで形成されます。

小麦粉が水分と合わさり、そこに物理的な力(=捏ねる・ミキシング)が加わることで、別々だったたんぱく質(グリアジンとグルテニン)が絡み合い、つながり、網目状の構造になります。この網目がグルテン構造です。</

この網目に、イーストが発酵で生成したガスを、どんどんキャッチしていきます。発酵が進み、ガスがたくさん生成されれば、その分、生地もふくらみます。

さらに詳しく:小麦粉のたんぱく質について

小麦粉中には、たんぱく質が6~16%含まれています。その内、約85%はグリアジンとグルテニンが同程度混在しています。

この2つのたんぱく質の性質は異なり、グリアジンは粘着質(伸び)で、グルテニンは弾力(こし)があります。この2つの性質が合わさることでゴムのように伸び、跳ね返る弾力のある生地ができます。

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発酵を左右する主な材料3選

砂糖

上記の発酵プロセスでも登場した砂糖はとても重要なエネルギー源です。ただし添加量で作用が変わってくるので要注意です:

  1. 砂糖は添加量は、小麦粉に対して7~8%程度にする

    7~8%で発酵を促進しますが、それ以上入れると抑制してしまいます。

  2. 対粉15%以上を添加すると、イーストとグルテンを弱らせる

    15%以上入れると、生地内の浸透圧が上昇し、パン酵母の水分が細胞外へ出てしまいます。パン酵母が弱り、発酵活動がかなり鈍くなります。さらに、パンの骨格となるグルテン結合も阻害します。

    その結果、パン酵母が十分に炭酸ガスを生成できず、また、グルテンもガスを十分保持することができないので、ダレた仕上がりになります。(生地が上にふくらまず、横へ横へと伸びてしまいます)

    ★対処法:砂糖多めの生地をつくる場合は、「加糖中種法」という製法を使うことで、ソフトなパンに仕上げることができます。

  3. 即効性がある

    砂糖は、パン酵母が即エネルギー源として利用可能なので、ミキシング(捏ね始め)と同時にインベルターゼ酵素により、果糖とブドウ糖へ分解されます。初動が速い分、添加しすぎるとパン生地への影響がでやすいのです。発酵時間の取りすぎには注意してください。

★ ワンポイントアドバイス

砂糖の添加量は対粉7~8%前後、多くても15%ほどに抑えるのが安全です(=小麦粉100gで作る場合は、砂糖7~15gに収める)

砂糖の浸透圧への作用を考慮し、材料の計量の際は、イーストと砂糖は別々に計量して、ミキシング直前に合わせます。同じボールで材料を計量すると、イーストと砂糖が触れ合ってしまい、砂糖がイーストに作用し始めます。計量は別々のボールで行いましょう。

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塩も、適正な添加量でイーストの活動をアシストし、グルテンを強化させる作用があります。

  1. 塩の添加量は、一般的に、小麦粉100%に対して2%にする

    小麦粉中には、パン酵母の作用を阻害する微量物質の、ピュロチオニン(発酵阻害物質)が存在しますが、塩はこの物質を抑制します。

    ただし、塩は糖分を分解する酵素の作用を抑制する働きがあるので、3%以上入れてしまうと発酵がにぶくなります。

  2. 砂糖が多い生地には、0.8%~1%に添加量を減らす

    菓子パンなど砂糖の添加量が多い生地では、塩の添加量を減らすと生地のバランスがよくなります。

  3. 塩は、グルテンを引き締める

    塩を入れることで生地に弾力がつき、グルテンのガス保持能力をアップさせます。塩がまったく添加されてない生地は、膨らむけどグルテンが弱いので、少しの刺激ですぐにしぼんでしまいます。

モルト

出典:富澤商店ユーロモルト商品ページ

フランスパンや食パンなど、超シンプル食事パンを作るさい、よく配合される材料の1つがモルトエキス・モルトシロップです。

家庭でパン作りをしている方はあまりなじみのない材料かと思いますが、富澤商店などにおいてあるので、ぜひチェックしてみてくださいね。

  1. モルトは、麦芽糖

    モルトエキスは大麦を発酵させたもので、麦芽糖と、αアミラーゼ(でんぷん分解酵素)が含まれています。

  2. モルトは、パン酵母の発酵活動をアシストする

    小麦粉のでんぷんは、まず、αアミラーゼによって麦芽糖に分解されて初めてイーストに活用されます。そのため、モルトエキスが入っていない生地では、αアミラーゼの分解活動が終わってから、イーストが発酵活動をはじめるので、発酵プロセスがスタートするまで、時間がかかります。(参照→「①小麦粉内のでんぷんが麦芽糖に分解される」

    モルトエキスには、イーストがすぐにエネルギー源として利用できる麦芽糖が入っているので、ミキシング後すぐにイーストが発酵活動をはじめられます。また、モルトエキス中のαアミラーゼが、小麦粉のでんぷんの分解を加速させます。

    このように、モルトエキスは2段階でイーストに安定的にエネルギーをお届けできるのが、最大の特長です。

  3. じっくり発酵させる生地に向いている

    バゲットなどシンプルな配合のパンは、じっくり発酵を取ることを前提としているため、もともとイーストの添加量が少ないです。なので、モルトエキスを添加することで、少量のイーストでも発酵が持続できるようアシストすることができます。

  4. 砂糖が配合されていない生地に向いている

    バゲットには通常、砂糖は添加しません。モルトエキスが、砂糖という即効性のある糖分の代わりを担います。モルトは甘味がないので、シンプルな食事パンの生地を作る際には欠かせない材料なのです。
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発酵を左右する材料以外の要因5選

ミキシング①どこまで捏ねればOK?


ミキシング時間(捏ねる時間)は、生地のグルテン構造の強度に影響します。ミキシングでは、”イーストが生成した炭酸ガスを包み込んで保持できるくらい“の強度があるグルテンを生成するのがポイントです。

では、適正ミキシングはどのように見極めればよいのでしょうか?

これは、パンの種類によって様々ですが、基本的な食パン・菓子パン生地を前提に記載します:

  1. 適正ミキシングの生地は、よく伸びてつややか

    ミキシングが適正で、グルテンが結合している生地は、表面がなめらかで、つやがあり、生地を伸ばすと指の指紋が透けるほどの薄い膜ができます。よく伸び、膜もスーッと裂けます。





  2. ミキシング不十分の生地は、ぼこぼこしている

    十分に捏ねられていない生地は、表面がぼこぼこし、ひっぱるとすぐに生地がちぎれてしまいます。この状態を、アンダーミキシングと言います。ミキシングが足りていない(”Under”な)状態です。

    この状態ではグルテン構造は不十分で、ガスを保持することができません。また、生地が伸びず、引き締まっているので、この状態で分割や成形をすると生地が傷んでしまいます。

    焼き上がりのパンも、ボリュームが出ず(ふくらまず)、皮が厚く、詰まった仕上がりになります。

  3. ミキシング過剰の生地はトロトロ

    逆に、捏ねすぎた生地は、非常になめらかで、トロトロしています(手ごねの場合、生地がこの段階まで来ることはないです)。

    なぜかというと、グルテンの網目が過剰なミキシングによって引きのばされ、引きのばされ、さらに引きのばされた結果、とても細く脆い構造になってしまいます。とろけるチーズのように、頼りない触感です。

    グルテンが細くて、もろい分、焼き上がったパンの歯切れがよくなるので、ハンバーガーバンズなど具材をたのしむパンは、わざとこの段階までミキシングします。
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ミキシング② 手ごねについて


少し番外編ですが、前章で記載のように、生地がしっかりガスを保持できるくらい強いグルテンを作るのが発酵にとって重要です。穴の開いていない風船(グルテン)を作るというイメージです。

グルテンは、捏ねると強くなりますが、家でパンを捏ねるのはけっこう大変!

いっぱい練って、面台にたたきつけて、体力と時間を使います。はじめてパン作りをする方は、ここで挫折することもしばしば。

そこでおすすめなのは、オートリーズという方法を応用することです。グルテンは、休ませていても、勝手につながるという性質があります。この方法は、あまり捏ねたくないけど、グルテンを生成したいバゲット等で使われる方法ですが、おうちで手ごねするときにも応用できます:

 やり方は簡単:

  1. 小麦粉、水、パン酵母を混ぜる
  2. そのまま20分放置
  3. 残りの材料を入れて捏ねる

20分放置している間に、グルテンが生地内で勝手に生成されます。

<オートリーズ前:生地がぶつぶつ切れてしまいます>

<オートリーズ後:生地に伸びが出てきます>

★ ワンポイントアドバイス

① オートリーズは最長20分にしましょう。(それ以上置いても効果は変わりません…)
② 塩・砂糖・卵などの材料はオートリーズ後に投入してください。これらの材料はグルテンやイーストに作用するので、オートリーズの際は入れないでください。

また、同じ原理で、オーバーナイト法といい、生地を一晩ねかせて作る方法もあります。下にリンクをはったので、興味のあるかたはぜひ。特に初心者の方や、パン作りのためにまとまった時間をとれない方におすすめです:

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生地の捏上げ温度

捏ね上げ温度とは、ミキシング直後の生地の温度のことです。

その後の発酵時間や、発酵の進み具合に影響をあたえる重要な温度です。パンの種類によって適正捏ね上げ温度が変わってきますが、まずは、レシピ記載の温度で捏ねあげることが、安定したパン作りのためにとても重要です。

  1. 生地の温度は食パンや菓子パンでは25~28℃が適温

    パン酵母は37℃~38℃で最も活性しますが、食パンや菓子パンの場合25~28℃、バゲットで22~24℃前後(※季節にもよる)を目指すのが無難です。生地温度を測るときは、0.1℃で測れるデジタル温度計がおすすめです。

    生地の温度と発酵時間を毎回、記録すると、季節の変わり目にどれくらいの温度で、どの程度発酵させればよいのかといったことがわかるようになるので、おすすめです。

  2. 温度が低すぎると発酵がゆっくりになる

    生地の捏上げ温度が20℃以下の低い温度だと、パン酵母の活性がとてもにぶくなります。ガス生成能力が下がるので、生地のボリューム(ふくらみ)が出にくくなります。

    また、活動が弱いということは、生地内の糖分を消費していないということ。そのため、焼き上げたパンは、いつもより赤茶色になります(理由は、生地内の糖分がパンの焼き色に影響するからです。ここでは割愛しますが、詳細はこちらから

  3. 生地温が高すぎると、過発酵になりやすい

    パン酵母の最も活発な温度帯まで生地温度を上げると、発酵がどんどん進みすぎてしまい、パンの見た目や味を落とす原因になります。

    また、生地温が上がると、酵素の動きも活発になり、これはグルテン構造をやわく、もろくします。結果、グルテンがどんどん生成される発酵ガスを保持することができなくなり、ふくらみません。

★ ワンポイントアドバイス

夏場は室温が高くなるので、小麦粉等の材料をあらかじめ冷やして利用すると◎です。冬場は逆に温かい40℃程度のお湯で、調整してください。

また、ミキサーやキッチンエイド等でミキシングする場合は、機械の摩擦熱で温度が上がりやすいので、夏場は水は10~15℃のやや冷たいものでOK。

捏上げ温度1℃の上下は、発酵時間15~20分に相当すると言われています。目標の温度よりも高く捏ねあがったら、発酵時間を気持ち短くするなど調整してみてください。

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発酵の温度


生地を発酵させる温度は、28~32℃が無難です。パン酵母が最も活動する温度帯は、35~38℃ですが、雑菌繁殖や生地全体のバランスを考えると、28~32℃が安全です。

夏場のように室温が温かい場合は、常温や日向に置いておけば十分に発酵します。冬場の場合は30℃~35℃の場所で発酵させるのが無難です。

★ ワンポイントアドバイス

冬場に温かい発酵場所を家庭で作るのは大変ですよね。暖房を、がんがんつけるわけにもいきませんし…その場合は電子レンジを活用するのが◎です:

①電子レンジの発酵機能を使う
②発酵機能がない場合は、電子レンジの中に、パン生地(ボールに入れてラップをする)と沸騰したお湯を注いだマグカップを一緒に入れます。沸騰したお湯の蒸気で電子レンジ庫内が温まり、また蒸気によってパン生地の乾燥も防げます。※乾燥はパンの大敵です

発酵時間

パン作りの工程には発酵を取るタイミングが、複数回あります。

1次発酵、ベンチタイム、2次(最終)発酵が主な発酵時間です。発酵時間は長くても、短すぎてもNGなので、生地を状態を常にみてあげましょう。

★ 適正発酵の見極め方

  1. 見極め方①フィンガーテスト

    発酵した生地に指を入れて穴を作り、生地の戻り具合(弾力)を観察します。指を抜いた後生地がほとんど戻ってこなかったら、適正な発酵と言えます。


  2. 見極め方②膨張率(ふくらみ具合)

    生地が発効前に比べて2倍程度の大きさになればOKです。

 発酵を長く取りすぎてしまうと、次のようなマイナス影響ができてしまいます:

  1. パンが穴あきしやすくなる

    パン酵母の発酵活動が必要以上に進んでしまい、生地内の炭酸ガスが過剰になります。その結果、生地が大きくふくらみ、ぶかぶかします。はりがなく、パンチ、分割、成形時に大きなガスを抜き切ることができません。そのため、焼成後スライスすると、大きな穴あきがある可能性が高いです。


  2. イースト臭がきつくなる

    イースト独特の香りがつよくなります。イースト臭は好みが分かれるところではありますが、昔ながらのパンはイースト臭が強いですね。

  3. パンの焼き色が付きにくくなる

    パン酵母が過剰に発酵活動をしているということは、その分、生地内の糖分(発酵のエネルギー源)が消費されているということです。そのため、焼成時、生地内の残糖量が少なくなってしまいます。

    パンの焼き色は、糖分に熱が加わると起きるカラメル化反応やメイラード反応で付くので、残糖量が少ない生地は色づきも悪くなります。

■ 逆に、発酵が短すぎても、次のようなマイナイス影響があります:

  1. ボリュームが出にくくなる

    パン酵母が、炭酸ガスやアルコールを十分に生成していない状態なので、全体的にボリュームのない焼き上がりになります。

  2. 味気がないパンになる

    発酵による熟成や、パンの香り成分の生成も不十分のままなので、パン特有の風味がなく、味気なくなります。

  3. 生地が伸びずらくなる

    発酵中は、パン酵母の発酵活動も進んでいますが、同時にグルテンもゆるんでいます。

    どういうことかと言うと、ミキシングや成形で力が加わった生地(加工硬化といいます)は、グルテン構造が複雑に絡まり引き締まっている状態なので、伸ばそうとしても伸びません。

    発酵時間をとることで、絡まったグルテン構造のすきまにパン酵母の発酵ガスが入り込み、グルテン構造をゆるめ、ほぐしていきます。ガスでグルテンが再び引きのばされることで、生地は伸展性を取り戻すのです。



    しかし、発酵時間が少ないと、生地が十分にゆるんでいないので伸びません。伸びない生地は、傷つきやすく、このような状態のまま、分割、成形とさらに力を加えると、生地表面が荒れてしまいます。焼成後も生地表面はぼこぼこしてツヤのない“せんべい肌”になります。
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まとめ

発酵は、①イースト(パン酵母)の活動と、②グルテン構造(パン酵母が生成したガスを包み込む構造=風船)の2つをコントロールすることで、成り立ちます:

  1. 発酵とは、生地内の糖分(小麦粉由来の麦芽糖とショ糖)が、パン酵母内の酵素によってアルコールと炭酸ガスに分解されること。
  2. 糖分の分解が進むと同時に、小麦粉内のたんぱく質は、水と捏ねられることで網目構造のグルテンを生成する。パン酵母によって生成されたガスは、グルテン構造の中に包み込まれ、保持されることで生地が膨らむ。
  3. パン酵母のガス生成活動、およびグルテン構造の強度を影響する主な材料は、砂糖、塩、そしてモルトエキス。それぞれ適量を添加することで、パン酵母の発酵を補助し、グルテン強化をサポートする。
  4. 生地のミキシング時間、捏上げ温度、発酵時間、発酵温度が発酵の進行とグルテン構造の強度に作用する。
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さらに詳しく知りたい方へ【おすすめの文献】

★初心者向けのおすすめ図書:

分かりやい、読みやすい、初心者でもスルスル読める一冊です。とりあえず、これを読めばパン作りの基本はばっちりです。

中級者以上向け

さらに詳しく、専門的に勉強したいという方向けのおすすめの1冊です。製パン学校で教材として使われている本で、パン職人になりたい方なら、読んでおくべき&手元にあると安心の1冊です。

★ 発酵についてさらに詳しく知りたい方におすすめの記事

★ パンの発酵を影響する主な材料に関する記事

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さいごに

ざっとですが、生地をふくらませる発酵の仕組みと、発酵に影響を及ぼす要因を解説しました。イースト(パン酵母)の活動量と、グルテン構造の強度がかぎですね。

それぞれの工程や、材料の影響については、今後さらに詳しい記事を随時投稿していくので、併せてご覧いただけたらと思います!それでは、今日もパン作り楽しんでください:)

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