冷蔵・冷凍生地をきれいに焼くための、復温とは【正しいやり方でパンの火ぶくれ、穴あき等の失敗を回避】

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「冷蔵で低温発酵させた生地って、ストレートで仕込んだものより焼き上がりがイマイチだなぁ…」と感じたことありませんか?

表面がぶつぶつしたり、膨らまなかったり。

本記事では、オーバーナイト法や冷蔵生地玉法の生地でも、きれいにおいしく焼くためには欠かせない、「復温」について解説しています!

冷蔵生地を常温にもどす「復温」の効果と正しいやり方さえ抑えれば、パンの焼き上がりがきれい&おいしくなります!

本記事は次のお悩みがある方におすすめ:

  • 冷蔵・冷凍後の生地の扱いがよくわからない
  • そもそも復温って何?必要なの?どうやるの?
  • 冷蔵した生地を焼くと、表面がぶつぶつしたり、穴あきしたり、膨らまないし、なんとかしたい


復温は、不足でも、やり過ぎても焼き上がりに影響します。

なので、復温の終了の目安を把握するのが重要です。本記事では、復温の正しいやり方と見極め方をやさしく解説してるので、ぜひ参考にしてくださいね。

それでは、さっそく詳細をチェックし、おいしいパンを焼いていきましょう!

目次

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はじめに補足:冷蔵生地玉法・オーバーナイト法についてサクッと説明

パン作りは、仕込みから焼成まで1日のうちに完結させるストレート法と、工程のどこかのタイミングで一回生地を冷蔵、あるいは冷凍させる手法があります。

これをオーバーナイト法や冷蔵・冷凍法と言います。

オーバーナイト法では、生地を仕込んで1次発酵が終了した時点で冷蔵します。

その他、生地を分割して、丸めた状態(生地玉と言います)で冷蔵ないし冷凍させる、生地玉冷蔵法・生地玉冷凍法というやり方が、利便性も高く、おうちでも現場でもよく取り入れられている製法です。

本記事では、仕込み後、あるいは生地玉にした状態で冷蔵・冷凍した生地を、正しく復温する方法をやさしく解説していきます

復温(ふくおん)とは

復温(ふくおん)とは、冷蔵や冷蔵させた生地の温度を常温でもどすことです。
この際、生地全体の温度をゆるやかに戻していくことが重要です。

復温のやり方と復温終了の目安

復温の最大のポイントは、生地の外と中の温度をできる限り均等に、ゆるやかに戻していくことです。

★ ポイント

  • 常温でゆっくり生地をもどす

    冷凍生地の場合は冷蔵→常温と2段階でもどす

  • 生地をさわって、中心に芯がのこっていなければOK

    復温不十分の場合は中心温度が低いため生地中心がまだ硬い

  • 復温終了は、生地の中心温度が15℃以上になればOK

    生地を触って確かめてもいいですが、可能であれば、中心温度は、デジタル温度計で測ると間違いないです。

    デジタル温度計は、生地を仕込むさいの水の温度や、生地の捏ね上げ温度を測るさいにも使えるので、パン作りをするには欠かせない道具の1つです。

冷蔵生地(オーバーナイト法含)の復温

冷蔵生地であれば常温で徐々に戻します。

電子レンジの発酵機能をつかったり、発酵機(ホイロ)など温度が高い場所にいきなりいれてしまうと、下図のように、表面温度だけが戻り、中心は冷たく芯が残った状態になります。

パン酵母は冷蔵の状態だと、休眠しており、発酵活動を停止しています。でも、生地の表面温度だけが温かくなると、生地の表面にいるパン酵母だけが、再び発酵活動を開始します。

まだ生地が冷たい、中心部にいるパン酵母の発酵活動は鈍いので、生地全体の発酵のバランスが崩れてしまいます。

■ 具体的な復温の時間

  • オーバーナイト法の場合

    生地量が多いのであれば、冷蔵する前に、生地を2つに分けて冷蔵すると、復温がスムーズにできます(大きい塊の生地よりも、小分けにしたほうが均等にもどります)。

    生地量と季節にもよりますが、40分~90分かかるので、時間に余裕をもって戻すといいです。

  • 生地玉冷蔵法の場合

    生地を分割してから冷蔵し、解凍する生地玉冷蔵法の場合は、小物(50g~100g程度の生地玉)であれば、復温時間は大体40~60分(季節による)あれば間に合います。

■ ワンポイントアドバイス:ラックタイムについて

復温させた生地を成形した後、もし、まだ生地が少し冷えているかもと思ったら、いきなりホイロにいれずラックタイムを10分ほど取るとよいです。

ラックタイムとは、冷たい生地を10分~常温で温度を戻す時間のことです。生地温が戻った後に、ホイロや発酵機に入れて発酵をとります。徐々に温度を上げて二次発酵を取ると、生地内外の温度を均等に保つことができます。

ちなみに、2次発酵後ホイロや発酵機から出した生地を、5~10分乾燥させる時間もラックタイムと言います。焼成前に生地の表面を乾かすことで、バゲット等のクープが入れやすくなる、塗玉(パンの照りだしで塗る卵のこと)が塗りやすくなるといった効果があります。

冷凍生地玉の復温

冷凍生地であれば、冷蔵で解凍したあと常温で戻していきます

冷蔵生地と同様、いきなり高い温度帯で解凍すると、生地の外側と内側の温度に差が出てしまいます。

先に温度がもどる生地表面で発酵が進んでしまう一方、生地の中心部はまだ冷たく硬いまま…という状態を絶対に避けてください!

※ちなみに、パン屋では、時間と温度を設定できる設備、ドウコン(ドウコンディショナー)に冷凍生地を前日の夕方にセットし、一晩かけてゆるやかに生地温度を戻します。

そうすることで、翌早朝すぐに作業に取り掛かれるため、作業の効率化ができます。

復温不足 も 復温しすぎもNG【比較表で見る・あんぱんの場合】

前述の通り、復温終了の目安は、生地の中心温度が15℃以上になったらOKです。

では、復温なし(中心温度0度)と、復温を取りすぎた場合(中心温度30℃)では、生地の作業性や仕上がりにどのような影響があるのでしょうか??

■ 復温不足と復温しすぎの生地の比較写真&表:

スクロールできます
中心温度0℃
(復温が短い)
15℃
適正
30℃
(復温が長すぎ)
成形時の生地の様子・作業性がわるい
・生地がまだ冷たいので、生地が伸びない。生地を無理やりのばしてあんを押し込まないと包あんができない。
通常通り・生地温が戻りすぎているので、過発酵の生地のように、気泡がたくさんできており、綿棒でのしても大きいガスを抜ききれない。
・生地が伸びすぎて作業性がわるい
2次発酵(30℃)の生地の様子・べたべたしだれる
・冷たい生地をいきなり温かい場所で発酵させるので、生地表面が結露する(水がでてべたべたになる)。
ホイロオーバー(過発酵状態)で生地が大きく膨らみすぎる
外観・はりがない
・おしりがペタッとしている
・はりがある
・ボリュームがある
内相すだちが粗い
食感発酵が進んでいなので、歯切れがよい発酵が進んでいるため、グルテンがしまっており、引きが強くむぎゅっとした食感

復温が短いパンはどうなる?

復温が短いと、表面がぶつぶつして膨らまない、残念な見た目になりがちです。  

  1. 表面がぶつぶつ、火ぶくれする
  2. ペタッとして膨らまない
  3. すだち(内相)が粗くなる  

では、なぜ復温が短いとそのような見た目になってしまうのでしょうか?

詳細をみていきましょう。

表面がぶつぶつ、火ぶくれする

冷蔵から出したばかりの冷たい生地を成形し、いきなり30℃前後で最終発酵(ホイロ)を取ると、生地表面の温度のみが急激に上がり、結露してしまいます。冬、暖房を部屋でつけると結露してしまうのと同じです。

そして、結露で水でべたべたになった部分の生地は、弱くなります。

生地は、パンの骨格となるグルテンの網目状の構造によって、きめ細かい内相とつるっとした表面に焼き上がりますが、水分により、グルテン構造の結合が弱くなってしまいます。

そのため、その状態で焼成すると、温度上昇で膨張したガスにグルテンが耐えられず、グルテン結合が弱いところへガスが逃げていきます。そのため、表面がぶつぶつした火ぶくれ状態になります。

ペタッとして膨らまない

下の写真は、復温不足のパンの断面です。上にパンがふくらまず、横にだれていて全体的にペタッとしています。


 

冷蔵から出して復温が不十分な生地は伸びないので、成形も無理やり力を入れて行わないとできません。しかし、無理やり力を入れて成形することは、パンの骨格を支えるグルテンに、ダメージを与えることになります。

パン生地は、グルテンがゆるみ、グルテンという風船の中に、パン酵母が発酵活動で生成した炭酸ガスが入っていくことで、伸展性がでて、上に膨らむようになります。

この状態になるには、復温で冷たく引き締まった生地をゆるませ、パン酵母が発酵活動を開始するまで待つことが必須なのです。これが復温の意味です。

復温をすることで、パン酵母の炭酸ガスが、グルテンを風船のように引き延ばしてくれます。伸びる生地は窯伸びもするので、焼き上がりもふっくらします。

復温が不十分だと、グルテンとパン酵母の相互作用で生地の伸びを取り戻すことができず、上に伸びない、ペタッとした仕上がりになってしまいます

すだち(内相)が粗くなる

写真の右のロールが復温が適正、左が復温不足のロールです。右のロールに比べて、左のほうが全体的にすだちが粗いのが分かります。

また、右の復温適正パンのほうが、パンの底がういていて、全体的に上に伸びていて丸みがあるのがわかります。


【左:復温不足のパン、右:復温適正のパン】

冷蔵から出してすぐの冷えた生地を、復温させずにすぐに成形すると、生地が硬くて冷蔵中に発生した発酵ガスを、抜ききることができません(生地のガス抜きができません)。

パン酵母は4~10℃で発酵活動をほぼ停止しますが、ゆるく発酵はしているため、冷蔵庫の中に置いていても、炭酸ガスは生地中にたまっていきます。

きちんと復温させた生地で丸めや成形をすると、生地内の大きいガスが抜け、グルテン構造もより複雑に絡まり、生地の内層がきめ細かになります。

しかし、復温をしていない伸びない生地で成形をすると、大きいガスを抜けずそのまま生地内に残り、焼き上がりの断面(内相)は粗くなりがちです

復温させすぎのパンはどうなる?

逆に復温が長すぎると、 よく膨らむが、すだち(内相)が粗くなります。

ベンチタイムを長く取りすぎたときの状態と同じ現象がおこります。(ちなみに、ベンチタイムとは生地の分割・丸めのあとの生地を休ませる時間のことです)

よく膨らむが、すだちが粗くなる



復温時間が長すぎると、その分発酵が進んでおり、パンの骨格となるグルテンも伸展性が出ているので、よく膨らみ、窯伸びのよい仕上がりになります。

ただし、復温が短い場合と同様、すだちが粗くなります。

これは、復温し過ぎることで、パン生地中にたくさんのガスが発生し、成形時に大きいガスを抜ききれなくなるからです。

大きいガスが生地中に残った状態で成形するので、必然的に焼き上がりの生地は穴あきしやすくなります。

まとめ

  1. 復温(ふくおん)とは、冷蔵や冷蔵させた生地を常温にもどすこと。

  2. 復温のポイントは、生地全体の温度を常温でゆるやかに戻していくこと。そして、生地の中心温度が15℃になり、生地をさわったとき中心に芯が残っていなければ、復温終了のサイン。

  3. 冷蔵から出した冷えた生地を十分に復温させないで、成形すると、生地に伸展性がないため作業性が悪くなる。また、焼き上がりのパンはボリュームが小さく、火ぶくれし、すがちが粗い仕上がりになる。発酵が少ない分、歯切れのよい食感になる。

  4. 逆に復温させすぎた生地(中心温度30℃)は、発酵が進みすぎて、ベンチタイムを取り過ぎた過発酵な状態になる。窯伸びはするが、生地中に発生した大きいガスが抜ききれていないため、すだちが粗くなる。

  5. 復温は、冷蔵や冷凍生地の温度をもどすだけの工程だが、そのやり方や復温終了の目安を間違えると、パンの見た目、味、食感に大きな影響があるので、きちんと見極めるのが重要。

最後に…

今回は、冷蔵や冷凍した生地の温度をもどす工程、復温について詳しく取り上げてみました。

生地温をただ戻すだけの工程ですが、結構おくが深いですよね。

復温なしも、させ過ぎも、焼き上がりにあんなに差がでるのです。また、復温は当たり前ですが、夏場と冬場でかかる時間にだいぶ差が出るので、要注意!

復温について理解できれば、便利な冷蔵法や冷凍法をうまく活用してパン作りができるようになるので、ぜひ取り入れて見てください!

それでは今日もパン作り、楽しんでください:)

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