イーストの使用量って、レシピによって結構バラついていることが多いですよね?
でもイーストは、普段の料理では使わないので、適量が分からないという方も多いと思います。
特に、パン作りをはじめたばかりだと、他にも次のような疑問があるかと思います:
- イーストの使用量の目安がわからない。
- どのイーストを使えばよいかわからない。
- 使用量がやたら多いレシピと、逆に少ないレシピの差がわからない。
そこで本記事では、パンの種類ごとのイーストの添加量の目安を一覧表でわかりやすくご紹介。
また、パン作りをする際に知っておいて損はない、イーストの添加量と使うべきイーストの種類についてもご紹介します。
これがわかれば、しっかり発酵したおいしいパンが焼けるようになります。
それでは、さっそく見ていきましょう!
※本記事中の「イースト」とは、「パン酵母」のことを指します。
インスタントドライイースト使用量の目安【一覧表】
パンの種類ごとのインスタントドライイーストの使用量(目安)を下表にまとめてみました↓
下表の目安量は、製パン学校で利用したテキスト・実習レシピ、職場で何度も仕込んだルセット等をもとに作成しています。(私も普段のパン作りで目安としている量です。)
表記はベーカーズパーセント(小麦粉量を100%とし、ほかの材料の割合を対粉比で表したもの)です。
イーストのほか、パンの主な副材料の使用量目安も記載しているので「このパンを作るには、この材料をこのくらい入れるなぁ」という基準がわかるようになると思います:
■ 食事系のリーンな配合のパンの場合(※製法は、1日で仕込みから焼きの工程を完結するストレート法を想定)
パンの種類 | 食パン | テーブルロール・バターロール | バゲット |
---|---|---|---|
インスタント ドライイースト | 0.5 ~0.7% | 0.7 ~1.8% | 0.35 ~0.4% |
小麦粉の種類 | 強力粉 | 強力粉/準強力粉と併用 | 準強力粉 |
塩 | 1.8~2% | 1.8~2% | 1.8~2% |
砂糖 | 5% | 10 ~15% | – |
油脂 | 5% | 15% | – |
その他副材料 | – | 卵・牛乳など | – |
■ おやつ系のリッチな配合のパン(※菓子パンはストレート法、ブリオッシュとクロワッサンは、オーバーナイト法(生地を一晩、冷蔵で寝かせてつなげる)を想定しています。)
パンの種類 | 菓子パン | ブリオッシュ | クロワッサン |
---|---|---|---|
インスタント ドライイースト | 1~2% ※砂糖の添加量と比例して増やす ※耐糖タイプのイーストの使用がすすめ | 1 ~1.5% ※耐糖タイプのイーストの使用がすすめ | 1.3 ~1.5% |
小麦粉の種類 | 強力粉 | 強力粉/準強力粉と併用 | 準強力粉 |
塩 | 0.8~1% | 0.8~1% | 2% |
砂糖 | 15 ~20 % 多いものだと~30% | 10 % | 5 ~10% |
油脂 | 15 ~20 % | 50 ~60% | 【生地添加】 5% 【折込み用】 対生地25%~(お好み) |
その他副材料 | 卵・牛乳など | 卵・牛乳など | 牛乳 |
備考 | ※一般的にオーバーナイト | ※生地はオーバーナイト、翌日にバターの折り込み |


砂糖の使用量で、イーストの使用量も変わる
イーストの使用量を左右する1つの要因は、砂糖の添加量です。
砂糖の量が多い生地のほうが、イースト量が多くなります。なぜなら、イーストは、大量の砂糖と生地内で一緒になると弱ってしまい、発酵能力が低下してしまうからです。
ここを理解するには、まず、生地の中でイーストがどのような活動をしているのかを理解する必要があります。
イーストの生地内での主な活動は、生地中の糖分を取り込み発酵活動(生命維持活動)をすることです。イースト(パン酵母)は、微生物なので、生きていくには栄養を取り込み、生命維持活動をする必要があります。イーストの生地内での、生命活動は以下の通りです:
- 自分のまわりの糖分(小麦粉のでんぷん由来の糖分・砂糖など副材料由来の糖分)を細胞内に取り込む。
- 糖分を自身の酵素で分解し、炭酸ガスとアルコールを生成し、生きていくためのエネルギーを得る。
このことから、イーストが生きていくには、糖分が必要だと分かります。しかし、生地中の砂糖の量があまりにも多くなると、今度は逆に、イーストの活動を抑制してしまいます。
例えば、きゅうりに塩をかけると水が出てくるのと同じ原理で、細胞の70%が水分でできているイーストも、大量の砂糖とあわさると浸透圧が生じ、細胞内の水分が外にでてしまい、弱まってしまうのです。弱ると発酵力も低下します。
ちなみに、下記の写真は、生イーストに塩をかけたものです。浸透圧の影響で、イーストから水分が出てドロドロになっているのがわかります。
なので、砂糖の量が多い生地を仕込む場合は、砂糖によるイーストのパワーダウンを考慮し、イーストの添加量を増やすのです。特に、菓子パンや、海外の甘いパンレシピを見ると、イーストの添加量がとても多いことが分かります。
加えて、パン屋では「耐糖性」タイプのイーストを利用することで、浸透圧の影響を最小限にしています。
耐糖性イーストとは?
イーストは生、ドライ、インスタントドライと3種類あります。
このうち、生イーストは菓子パン生地でも活用できます(ただ、生イーストは消費期限が早いので、ご家庭で使い切るのは難しいです)
インスタントドライイーストの場合は、
①低糖生地用、
②高糖生地用の「耐糖タイプ」の2種類があります。
パン屋などでは、砂糖の量が多い生地を仕込む場合は、下記のような耐糖タイプのイーストを必ず使用しています。
どちらのタイプのイーストを使うかの目安については、糖分12%以上の生地は「耐糖タイプ」、それ以下は「低糖性生地用」と覚えておきましょう💡
なぜ砂糖が多い生地には「耐糖性」イーストを使うといいの?
前述の通り、パン屋さんでは砂糖の多い生地を仕込む場合は、耐糖性イーストを使います。
耐糖性イーストを使うと、砂糖の浸透圧の影響を受けにくくなります。
なぜなら、耐糖性イーストは生地内の糖分の分解を得意とする酵素(インベルターゼ)の働きを抑えるからです。
通常の低糖用のイーストだと、砂糖(ショ糖)を分解する、インベルターゼ(イーストの細胞壁にいる)という酵素が仕事をし、砂糖(ショ糖)をブドウ糖と果糖に分解します。
そして、イースト内のチマーゼという酵素が、ブドウ糖と果糖に作用し、炭酸ガスとアルコールが生成され、生地が発酵します。
インベルターゼによる分解活動は、砂糖の添加量が、5~10%であれば問題ないですし、これはパンを作るうえで必要な活動です。
しかし、砂糖の添加量が15%以上になると、インベルターゼによって、生地中の糖分がどんどんブドウ糖と果糖に分解されていき、生地内の糖分が急激に増えてしまいます。そうすると、細胞の浸透圧がいっきに高まり、酵母の活性を弱めてしまいます。
なので、砂糖の添加量が多い菓子生地を仕込む場合は、耐糖タイプ(インベルターゼの活性力が弱いタイプ)のイーストを利用するのが、生地を効率的に発酵させるためには有効なのです。
ただ、わたしもおうちでパン作りをしているのですが、できれば1種類のイーストをどんなパンにも使いたいな、というのが本音です。
実際、砂糖の量が多い生地を低糖生地用のイーストで仕込んだこともありますが、その場合は製法を少し工夫すると、きれいに焼けます。
おうちでパンつくりをする方へ
普段から、基本菓子生地しか作らないというかたは「耐糖タイプ」を使うのがおすすめですが、色々な種類をちょこちょこ作りたいと言う方は、「低糖生地用」1本で、製法やイースト量を調整して使うのがいいと思います。



パン作りビギナーにおすすめなのは、インスタントドライイースト
イーストは、生、ドライ、インスタントドライの3種類ありますが、ご家庭でのパン作りやパン初心者に断然おすすめなのは、インスタントドライイーストです。
一番のメリットは、安定した生地ができることと、使い勝手の良さです。
■ インスタントドライイーストが、初心者の方向けの理由:
- 予備発酵がいらないので、直接、粉に投入できる。(ドライイーストの場合、予備発酵が必要)
- 生イーストに比べて日持ちする。(きちんと密閉し、冷蔵保管すれば~半年は使える)
- スーパーでも手に入る。
- 低糖生地と高糖生地用タイプがあるので、あらゆる生地作りが安定しやすい。
- 安い(スーパーで販売されているものだと、30g 300円~で購入可能)
インスタントドライイーストの注意点3つ
ただし、インスタントドライイーストを利用するさいは、次のことに注意する必要があります。
■ インスタントドライイーストを使う際の注意点:
- 投入するときに、冷水(15℃以下)に触れないようにする。
→酵母の活性が弱まるため - 投入するるときに、砂糖と塩に触れないようにする。
→これも酵母の活性を弱めてしまいます。
イースト(パン酵母)は、塩や砂糖の触れてしまうと浸透圧の影響で、パン酵母の細胞内の水分が外にでてしまいます(きゅうりに塩をかけると水分が出るのと同じ原理)。
水分がでてしまうと、パン酵母は弱まり、死滅してしまいます。 - 量りは、0.1g単位で計れるものを使う。
→イーストの添加量は少ないので、なるべく正確に測りたいところです。下記は、わたし愛用しているおすすめの0.1g量りです。参考までに。
おすすめのインスタントドライイースト3選
下記に、初心者はもちろん、上級者にもおすすめのインスタントドライイーストをまとめました。
わたし自身も職場で利用してきた製品を含んでおり、発酵力・使い勝手・保管のしやすさでおすすめの製品です:
①サフ・インスタントドライイースト(赤)
【プロも使用している、世界最大のイーストメーカーの酵母】
フランスのルサッフル社製の、定番のインスタントドライイーストです。フランスの大手メーカーの製品なので、安定品質と安定の発酵力はもちろん、使い勝手がよく、くせがないので、幅広い生地へ利用ができます。
上記の赤色のパッケージは、糖分12%ほどの低糖生地向けのパン酵母です。
また、赤パッケージのインスタントドライイーストには、ビタミンCが添加されているため、生地の安定性がアップするのが特徴。はじめてパン作りをする方にはぜひ使用して頂きたいイーストです。最近は、スーパー等でも見かけることが増えましたね。
②サフ・インスタントドライイースト(金)
【高糖生地向け、菓子パン、甘パン好きの方用】
こちらは、耐糖タイプのインスタントドライイーストです。
発酵が安定しづらい、糖分12%以上の生地(菓子パンやブリオッシュなど)に利用すると、発酵が安定しやすくなります。
利用方法は、(赤)と同じで、粉に混ぜるだけでOKです。
③スーパーカメリヤ ドライイースト
【お手軽・小分けタイプ】
こちらは、スーパーの製菓コーナーや小麦粉コーナー等でよく販売されている日清製粉のインスタントドライイーストです。
イーストが小分けになっていて、使いやすく、お値段もお手頃なので、思い立ったらすぐパン作りをできる手軽さがよいです。

【おまけ】イーストの換算方法
本記事では主にインスタントドライイーストを使う想定で解説していました。
しかし、イーストは、生、ドライ、インスタントドライの3種類あり、皆さんの中には、イーストを置き換えて仕込みたいという方もいると思うので、参考までに、イーストの換算方法を記載しました。
■ 生イーストをドライイーストに換算する場合は、つぎの比率で計算します:
生イースト 1:ドライイースト 0.5:インスタントドライ 0.35
■ドライイーストを、インスタントドライイーストに換算する場合は、つぎの比率で計算します:
ドライイースト 1:インスタントドライ 0.7
この比率だけでは、わかりずらい!という方向けに、詳しい計算方法の手順は、別記事にて計算例も交えつつ解説しているので、下記の記事を参考にしていただければと思います!

最後に…
本記事では、イーストの添加量の目安、おすすめのイーストや、なぜパン生地ごとでイーストの使用量と種類を変えるべきかについて解説しました。
もちろん、発酵はイースト以外にも様々な要因によって影響されますが、イーストの添加量の目安を知ることで、初めて挑戦するレシピの配合を見極めることができるようになるし(ネットにはちょっと怪しいレシピもいっぱいあります…)、自分のレシピを考える際の参考になると思います。
それでは今日もパン作り楽しんでください:)