イースト(発酵)とグルテンの関係【発酵と食感についての考え方・自分の理想の食感のパンを作るには】

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おうちでパン作りをしていて、

「どうも自分が理想とする食感に作れない…」

というお悩みを持っている方も多いと思います。

この記事では、発酵とパンの食感に関する次のようなお悩みを解決します。

ぜひ理想の食感のパンを作るのに役立てていただけたらと思います:)

  1. そもそもパンの食感って何なの?
  2. 発酵におけるイーストとグルテンってどのような関係なの?
  3. 発酵でパンの食感はどのように変わるの?
  4. 理想の食感に近づけるにはどうすればよいの?

パンは発酵するとふわっとしますが、それはパンの食感のもととなるグルテンと、パンを膨らませる炭酸ガスを作っているパン酵母(イースト)がうまく連携しているからです。

この2つの働きがうまくいくことで、おいしいパンが焼けます。

本記事では、パン酵母とグルテンの関係性をやさしく解説したうえで、どのようにすればパン生地を理想の食感に近づけることができるのか?を解説しています。

それでは、さっそく見ていきましょう!

目次

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パンの食感はグルテン

パンをスライスすると、断面に気泡が見えます。そしてこの気泡はパンによって全然ちがいますよね?

気泡の膜がうすくて、きめ細かいとふわふわした食感になります。食パンでいうと角食パンのように。

そして粗いものはサックリ軽い食感になります。食パンでいうとハードトーストなど。

同じ食パンでも気泡の様子で食感が変わってきますよね、

では、この気泡の正体はなんでしょう?

グルテンです。

パンが生地の時はグルテンが気泡で、オーブンにいれて焼いた後はでんぷんが気泡となりパンの形を支え、パンの食感を生み出しているのです。

<生地のときはグルテンが気泡>



<焼成後はでんぷんが気泡=食感になる>

なので、パンは気泡を食べることとも言えます。

そしてこの気泡を構成するのが、グルテンとイーストが発酵で生成する炭酸ガスです。

グルテンという風船(気泡)の中に、イーストの炭酸ガスが蓄えられることで気泡ができ、それをオーブンで焼くことで食感が生まれます。

もちろん食感を決定する要因は他にもありますが、

パン作りは、気泡の薄さやきめ細かさをグルテンの結合で調整し、そこへ発酵活動で生成されたガスを入れる作業とも言えますね

本記事では、パンの食感を影響する気泡を構成するグルテンとイーストについて解説し、この2つがどのように影響しあうのかを説明したうえで、どの工程でなにを調整すれば食感をかえることができるのかについて解説していきます。

はじめに 生地の中の2つの動き

発酵と食感の関係についての詳細に入る前に、下記の2つのポイントをおさえましょう。

ちょっと難しい用語が入りますが、しっかり解説していきます。

  1. 生地は、力を加える「加工硬化」と生地を緩ませる「構造緩和」の繰り返しで作られる

    *「加工硬化」:生地に物理的な力を加え、生地を引き締める工程(例:ミキシング、パンチ、分割・丸め・成形)
    *「構造緩和」:加工硬化の後に生地を休ませ、生地を緩める工程(例:1次発酵、フロア、ベンチタイム、最終発酵)

  2. 生地内では、イーストによる発酵活動と、グルテン構造(小麦粉のたんぱく質)の生成が同時進行しており、互いに影響を与えている

    *イーストの発酵は化学、
    *グルテン構造は物理、と区別して考えると、理解しやすいです。

①の加工硬化と構造緩和については、「パン作りは、生地に力を入れたら休ませるという作業を交互に行う」ということだけ覚えておけば大丈夫です。

図にするとこのような感じです。ピンクが力を入れる工程で、青が生地をやすませて発酵させる工程です。


☞なぜ加工硬化と構造緩和を繰り返すのか?さらに詳しく知りたい方はパンの作り方の記事を見てくださいね

②については、これから詳細を説明していきますね。

グルテンと発酵のバランスが取れると生地がふくらむ

生地の中では、イーストによる発酵活動とグルテンの生成および結合が同時並行で進んでいます。

イーストの発酵とはパンの膨らみのもととなる炭酸ガスの生成です。

そしてグルテンはパンの骨格を支える構造です。

グルテンが風船で、その風船の中にイーストのガスが入ることで生地が膨らむ。というイメージです

ふっくらおいしいパンを焼くには、グルテンとイーストそれぞれがきちんと活動して、連携していることが不可欠です

イーストの発酵が順調でも、グルテン構造が弱かったら、発酵による炭酸ガスを保持することができず膨らみません。

逆に、グルテン構造が完璧でガスを受け止める準備が整っていても、イーストが発酵していなければ、ガス不足でふくらみません。

それでは、イーストの発酵とグルテン構造についての詳細を見ていきましょう。

イースト(パン酵母)の動きについて

イースト(パン酵母)とは、自然界に存在している酵母のうち、パンの発酵に適した働きをする複数種の菌株のことを指します。

ちなみに、酵母(Yeast)は厳密には何百種類もの微生物の総称ですが、パン関連業界では、この総称を「パン酵母」の呼称として使用してます。

パン酵母の特徴は次のとおりです:

  1. 28~38℃の温度帯で活性する菌
  2. 70%が水でできている
  3. 60℃以上で死滅する
  4. 4℃以下で休眠(発酵活動をストップする)
  5. 酸素があれば呼吸をして増殖し、パン生地の中など酸素がない状況では、糖を炭酸ガスとアルコールに分解することでエネルギーを得て生きている(アルコール発酵)

☞イースト(パン酵母)についての詳細は下記記事にまとめています。

イーストの発酵について

イースト(パン酵母)は、生地内の糖分をエネルギー源とし、発酵プロセスを開始します。

イーストがエネルギー源とする糖分は主に、小麦粉のでんぷん(麦芽糖)と砂糖(ショ糖)です。

これらの糖分は酵素によって分解され、最終的には炭酸ガス(二酸化炭素)とアルコールが生成され、これらが生地を膨らませます

☞具体的な、糖分の分解ステップは下記の記事で解説しています。

発酵が長すぎると、パンがきれいに焼けない

上記の通りイーストの発酵には、エネルギー源である糖分が欠かせません。

なので、発酵が進むということは、それだけ糖分を消費しているということです。つまり、それだけアルコールとガスを生成しているということです。

発酵が進むと確かにガスはたくさん生成されますが、ガスがたくさんある=ふわふわのおいしいパンになるということではありません

なぜなら、

イーストが生成したガスがすべて均等に、グルテンというパンの骨格によって焼成まで保持されることで、はじめて膨らんだふわふわのパンになるからです

なので必要以上に発酵させすぎると(過発酵になると)、

  • 一見膨らんでいるようにみえるけど、パンの骨格を支えるグルテンが過発酵の影響で弱くなってしまうので、生地がしぼんでぺたんこになる。(過発酵のグルテンへの影響については次章にて解説

  • パンの香りがアルコールやイースト臭くなる。

  • 糖分が消費されているため、あまみも感じにくく焼き色も薄くなってしまう

といった影響がでてしまいます。

ちなみに、焼き色がうすくなってしまうのは、パンの焼き色は生地の中に残った糖分+熱(カラメル化反応)あるいは糖分+アミノ酸+熱(メイラード反応)によって起きるからです。

イーストがたくさん糖分を消費した生地には、焼き色を付けるだけの糖分がなくなってしまい、焼き色がうすくなってしまうのです(詳細は、パンの焼成とは?の記事にて解説しています)


適正な発酵で作ったパンは、

  1. グルテンの伸展性とガスの保持力がアップしているので、パンがふわふわに仕上がる。
  2. 発酵の過程でパン特有の豊潤な香りが生成される。
  3. 生地中に糖分が十分にのこっているので、おいしそうな焼き色が付く。

なので、発酵はながければ長いほどいいというわけではありません。

☞発酵させすぎた生地(過発酵)の影響は、下記記事にまとめています。

【おまけ】浸透圧でイーストは弱る(実験写真で解説)

発酵時間とは直接関係はないですが、おまけでイーストの弱点についてご説明します。(この章は読み飛ばしてもOKです)

糖分はイーストの発酵を促すエネルギー源、というおはなしをしてきましたが、必要以上に砂糖を添加すると逆にイーストの活動を阻害し、場合によっては死滅させてしまいます…

理由は、生地内の浸透圧にあります

浸透圧とは、2つの濃度が異なる液体が、半透膜(水は通すが、水に溶けている砂糖などの分子は通さない膜)を隔てて隣り合った時、濃度を一定に保とうする水分の圧力のことです。

☞水分は、濃度の薄い側から濃い側に、半透膜を通過して移動します。

■ イーストは、70%が水でできている

イーストは細胞膜を隔てて生地内の材料(水、塩、砂糖等)と共存しています。

なので、生地内に過剰な塩や砂糖が添加されていると、浸透圧が生じ、イースト内と外の液体の濃度を一定に保とうという圧力がかかります。

結果、イーストの細胞膜の中から水が外へ出てしまい、イーストは弱るか死滅します

下記の写真は、生イーストに塩を振って数分おいたものです。イーストの水分が外に出て、とけているのがわかります。きゅうりに塩をかけたら水が出てくるのと同じ原理です。



さらに時間をおくと、イーストが完全に溶けて死滅します。どろどろです。ちなみに、この状態のイーストは臭いです。これは、イーストが死滅することによって、グルタチオン(アミノ酸のかたまり)が出ているからです。

イーストの発酵についてわかったところで、次はグルテンについて解説していきます。

パンの骨格、グルテンについて

グルテンとは、パンの骨格を支える構造のことです。

小麦粉由来のたんぱく質と水をこねることで生成されます。

その構造は網目のような形をしていることから、「網目構造」と表現されます。

この網目の密度や絡まり具合がパンの食感に影響します

上記の写真からもわかるように、焼きあがったパンを建物に見立てて考えるとグルテンは建物の鉄筋部分と言えます

イーストの炭酸ガス、つまり、コンクリートが流し込まれたときに、しっかりコンクリートを取り込み建物を支えるという役割があります。

なので、鉄筋(グルテン結合)を強化することが、パン作りにおいて重要なのです

鉄筋の強度=「生地のつながり具合」となります。

これは作りたいパンや、目指すパンの食感などで調節していくのですが、そのためには、生地がつながる仕組みやそれが食感にどう影響するのかを理解することが重要です。

まずは、グルテンの特性について見ていきましょう。

グルテンは、力を加えることで強化できる

しっかり、ふくらんだパンに仕上げるには、パン作りの工程を通じてグルテンに適切に力を加え(加工硬化)、緩ませる(構造緩和)必要があります。(加工硬化と構造緩和については、本記事冒頭にて)

そうすることで、グルテン結合が強化され、伸展性と弾力を兼ね備えた生地を作ることができます

それでは、具体的にどのようにグルテンの結合を強化できるのでしょうか? 

ポイントを見ていきましょう

  1. 【特に重要】ミキシングをしっかり行う

    グルテンは力が加わると生成され強化されます。パンの工程では捏ねる作業が特に重要で、ここでしっかり捏ねてグルテンを生成することで、膨らみやすい生地を作ることができます。

    ※最初の捏ねる工程で、グルテン結合の強さがほぼ決定します。

  2. 1次発酵

    こねあがった生地を発酵する際は、やや小さめのタッパーやボールに入れます。

    そうすることで、生地が発酵するにつれてふくらんだ時、生地がボールのかべからの圧力を受け、グルテン強化につながります。



  3. パンチ

    パンチは1次発酵の途中で行う工程です。ガス抜きとも言われます。

    グルテンを強化させ、ふくらみやすい生地にするのは、パンチを強く行う、パンチの回数を増やす、生地をたたむ回数をふやすという方法がとれます。

    ちなみに。パンチを強く行うというのは、下記工程の⑥や⑦で生地をしっかり張らせるという意味です。


  4. 分割・丸め

    生地に弾力や張りが不足していたら、いつもよりやや強めにまるめることを意識します。

グルテン結合が弱いとパンが膨らみにくい

ここまでで、グルテンはパンの骨格でありパンの形を支えるため、パン作りの工程を通してグルテンを強化する必要があるというお話をしました。

そして、グルテンを強化するには、最初の捏ねる工程がとても重要です。

ここでパンの食感や膨らみがほぼ決定するといっても過言ではありません。

適正なこね具合は、作るパンの種類や目指す食感等で変わります。

例えば、

食パンや菓子パンは、食べた時に舌ざわりがよく、ふわっとした食感が好ましいので、グルテンをしっかりつなげていきます。


一方、バゲットなどの場合は、身のやわらかさより、皮のバリバリ感を出すのが好ましいので、一般的には食パンほどしっかり生地をこねません。(しっかりこねるけど、捏ねる時間は短くなり捏ねる強さも弱くなります)

ここでは、食パン&菓子生地をベースに、適正なミキシングと、ミキシングが足りない「アンダーミキシング」、ミキシングをし過ぎてしまう「オーバーミキシング」の生地のグルテンの状態と、パンの膨らみと食感への影響について比較してみましょう。


適正ミキシングミキシング不足
(アンダーミキシング)
ミキシング過剰
(オーバーミキシング)
グルテン結合イーストの発酵ガスをしっかり保持することができ、焼成時、窯伸びの圧力にグルテンが耐えられるグルテンの網目の絡まり(結合)が不十分で、イーストのガスを保持できないしっかり絡まっているが、グルテンが過度に引き伸ばされ細くなっている
グルテンの伸展性適正なミキシングにより、グルテンの網目が引き伸ばされ、伸展性があるグルテンの網目が十分に引き延ばされていないので、短く、太く、伸展性に欠けるグルテンが過度に絡まりあい、伸びより、弾力(こし)がでている
網目構造の密度網目構造が密グルテンがつながっている箇所と、つながっていない箇所があるとても緻密で、ガス保持も均等
製品・よく窯伸びする※

・穴あきしない

・ふわふわ

・断面のきめが細かく、くちどけがよい
・詰まっていて、
ボリュームが小さい
(膨らんでいない)

・発酵ガスを保持できず、上に膨らまず、横方向にだれてしまう

・グルテンのつながりが弱いところからガスが逃げていき、膨らまない
・グルテンが細すぎて窯伸びの圧力に耐えられず、膜がわれ穴あきしやすい※

・グルテンが絡まっているので、ひきが強い(パンを食べるとき、噛みちぎるのに力がいる)

※捏ねすぎると、グルテンがうすく細い構造になってしまうので、下図のようにオーブンへ入れたさいのガスの膨張によりグルテン膜がやぶれてしまう。

グルテンと発酵について:過発酵はグルテン結合を弱らせる【写真有】

ここまでで、イーストは発酵させすぎはNG、そしてグルテンは物理的な力を加えて強化することで膨らみやすい生地になるということがわかりました。

前章の「発酵が長すぎると、パンがきれいに焼けない」 で少しふれましたが、生地が過発酵になるとグルテンの結合が弱くなり、生地が膨らみずらくなります

適切に捏ねられて発酵も良好なグルテンは、下写真のように伸展性と弾力を兼ね備えており、風船のように薄く伸びます。

力いっぱいひっぱっても、簡単には破れません。見た目もつややかでです。

ここにイーストが発酵活動で生成した炭酸ガスがほじされることで、パン生地が膨らみます。

しかし、生地が過発酵になると、グルテンが弱ってしまうのです。

理由は、生地は発酵され過ぎると生地内の炭酸ガスとアルコールの量が過剰になるからです。

  1. イーストが生成する炭酸ガス(二酸化炭素)が過剰

    1次発酵等でイーストが排出した炭酸ガスは、グルテンの網目構造の中にどんどんトラップされていき、生地が膨らみます。

    そして、ガスがたくさん排出されることでグルテンが引き伸ばされ、結合が密になります(グルテンの網目構造が緻密になります)。

    ただ、発酵が過剰(過発酵)になってしまうと、必要以上にグルテンが細く、薄く伸ばされてしまい、もろい状態になってしまいます。

  2. イーストが生成するアルコールが過剰

    イーストが生成するアルコールは、グルテンを弱くする作用があります。

    一定量までは、グルテンをやわらかくし、伸展性を上げますが、過発酵になってしまった場合、グルテン構造を溶かしてしまいます

  3. 発酵にともなう、生地のpHの低下

    発酵が進むと、生地のpHが低下します。これは:
    ①アルコールが小麦粉や空気に含まれる酢酸菌によって酢酸に変化し、
    ②ブドウ糖が小麦粉や空気に含まれる乳酸菌によって乳酸に変化し、
    ③炭酸ガスが溶解することで起こります。

    特にライ麦は、小麦粉に比べて乳酸菌や酢酸菌が多く含まれています(ライ麦パン独特の酸味や香りのもと)。

    なので、よりグルテンが酢によるダメージを受けやすいのです。

    下記写真は、グルテンに酢をかけたあとの様子です。グルテンがどろどろに溶けているのがわかります。




適正な発酵の見極め(フィンガーテスト&膨張率)

それでは、「適正」な発酵はどのように判断すればよいのでしょうか?
ここでは、食パンと菓子生地系を基本に記載しますが、見極めポイントは2つです。

  1. 生地の緩みぐあい
  2. 生地のふくらみ具合 (膨張率)

生地の緩み具合はフィンガーテストでチェックする

「はじめに」でご説明した通り、生地は力を加える「加工硬化」と生地を緩める「構造緩和」の繰り返しで作られていきます。

フィンガーテストでは、生地がきちんとゆるみ、次の工程にいく準備ができているかをチェックします

■ フィンガーテストのやり方

発酵後の生地に指を入れて穴を作り、生地の戻り具合(弾力)をみます。

1次発酵後の生地

【適正な発酵】指を抜いた後生地がほとんど戻ってこなかったら適正な発酵と言えます。

【発酵不足】指を抜いた際、生地が反発して戻ってくる場合は、まだ生地が緩んでいない状態=発酵が足りていない状態と言えます。もう少し発酵を取りましょう。

【過発酵】指で生地を押した圧力で、生地から空気が抜けしぼんでしまった場合は、発酵し過ぎた、過発酵の状態です。

また、生地量が多ければ、生地全体の状態を見ましょう。ばんじゅうを揺らしたときの、ゆれ(ゆるみ)具合や、手全体で、生地の弾力を感じましょう。

<最終発酵後の生地


最終発酵後の生地の場合は、軽く表面を指で押して弾力を観察しましょう。また、生地全体を揺らしてみて、生地の揺れ具合、「ふるふる具合」を見るのもよいです。

生地の膨張率をチェックする

膨張率とは、生地の発酵前と後のふくらみ具合のことです。

一般的には、初めの生地体積の2.5倍~3倍まで膨らんだら発酵終了のサインです。

パンの食感はグルテン結合の緻密さや厚さに影響される

ここまでで、ふっくら膨らんだパンを焼くには、イーストとグルテンの連携が大切だとわかりました。

特に、食感に関しては、グルテン構造の

  1. 結合強度(生地のつながり具合・グルテンの網目のからまり具合)
  2. 緻密さ(グルテンの網目のきめ細やかさ)
  3. 伸展性(グルテンが焼成時のガスの膨張に合わせてしなやかに伸びるか、生地がふくらむか)

が重要です。

この構造内にイーストのガスが保持され、オーブンに入れた時グルテンがガスの膨張にあわせて伸び、パンのでんぷんが糊化して固まることで、パンの食感が生まれます

なので、パンの気泡(グルテン膜)の大きさや、膜の厚さがパンの食感となるのです

  1. そもそも、グルテン結合が強化されないと、イーストの発酵ガスを保持できず、焼いても、パンは膨らみません。
  2. そして、グルテンが緻密なほど、ガスが均等に保持されているので、焼き上がりのパンの断面が、均一できめ細かく、くちどけがよくなります。
  3. グルテンが緻密ということは、グルテンがとても絡まっている状態なので、パンのひきも強くなります。
  4. 最後に、グルテンに伸展性があることで、焼成したときにグルテンがオーブンの中の温度上昇とともに起きるガスの膨張にあわせて膨らむことができるので、ふっくらします。

これを踏まえて、目指す食感のパンを作るためのポイントをみていきましょう:

もちもち食感にしたい



上図の通り、緻密なグルテン構造はより複雑に網目が絡まっている状態なので、パンをかんだ時の「ひき」が強くなります。通常の食パンよりも、もちもちをうたった食パンのほうが、かみちぎる時に力が要りますよね。これを「ひき」と言います。

また、密なほどパンの断面は穴あきがなく、舌触りとくちどけがよくなります。

このようなパンを作りたい場合は、下記の工程を調整してみましょう:

  • ミキシングをしっかり行う
  • パンチを強めに
    (張らせる&たたむ回数を増やすことで、グルテンがより緻密に絡まります)
  • 発酵をやや長めにする
    (グルテンは休ませると結合が強化されるので、1次発酵を長くして、間で1~2回パンチをするといいです)

ふわふわ食感にしたい

ふわふわ食感にしたい場合も、もちもち食感の生地とおなじようにミキシングをしっかり行い、パンチも入れます。

グルテン膜を薄くすることで、パンの断面が左の写真のようにきめ細かくなりふわふわ口どけのよい食感になります。

ただ、ふわふわにしたい場合は材料にも工夫が必要で、卵や油脂など生地の膨らみを促す材料を入れてくださいね

歯切れがよい軽い食感にしたい

パンをかんだ時にすぐかみ切れて、食感があっさり軽いパンを作りたい場合は、グルテン結合を強くし過ぎないほうがよいです。

発酵時間を短くするなど調整して、グルテンの網目が太く短い状態で焼成します。(ドイツのカイザーゼンメル等かるい食感のパンは、1次発酵が40分程度と短いです)

ただし、最初のミキシングが不足すると、パンを膨らませるのに最低限必要なグルテン結合が不足して膨らまなくなるので、ミキシングはしっかり行いましょう

そのうえで、次のように工程を調整してみてください。

  • パンチをなくす。あるいは、畳む回数を減らしたり弱くするなどする。
  • 発酵時間を短くして、ガスがグルテンの網目を引き伸ばし過ぎないよう調整する。グルテンが比較的短かく、太い状態のままで焼く
  • 発酵が短くなるので、イーストの量を少量ふやす

まとめ

  1. 発酵は、イースト(パン酵母)の活動(糖分をエネルギー源として、アルコールと炭酸ガスを排出する)とグルテン(パンの骨格となる網目構造)が生成されることで、成立する。

  2. たくさん発酵させるとその分、ガスが生成されて膨らむが、ふわふわのおいしいパンになるということではない。生成されたガスがすべて均等に、グルテンによって焼成まで保持されることで、はじめてふわふわのパンになる。

  3. また発酵を長くさせすぎるとパンの香りがイースト臭くなる、色付きが薄くなるなど望ましくない影響がでてしまうので、適正な発酵をフィンガーテストと膨張率でみきわめるのが重要。

  4. しっかり、ふくらんだパンに仕上げるには、工程を通じて、グルテンを強化し(加工硬化)緩ませ(構造緩和)、グルテン結合と生地の伸展性を促す必要がある。特に、最初のミキシングでグルテンをしっかり生成をするのがポイント。

  5. 仕上げたいパンの食感によって、ミキシング、パンチや発酵時間に変化をつけ、グルテンのつながり具合を調整する。

最後に…

今回は、グルテンとイースト(パン酵母)の動きと、相互作用に焦点を当てて、パンの「食感」について考察しました。

もちろん、パンの食感には、副材料(砂糖、卵、油脂などなど)も大きく影響します…!

ただ、同じ配合で作ったとしても、工程ごとの生地の扱いで食感にも変化がでるということで、参考にしていただけたら幸いです:)

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コメント一覧 (2件)

  • パンを独学で勉強していて、本高いけど買おうかなあと思ってたところこのブログを偶然発見しました。
    正直、本買うよりyumikaさんのブログ見ながら練習する方が良いんじゃないかと思える内容でした!(笑)
    非常に丁寧な解説でかゆい所に手が届くような神内容です。

    「近くのお店に負けない美味しいマラサダを作る!」という目標があるので、yumikaさんのブログを参考にしながら練習していきます。ありがとうございます!

    • こばやしさん、はじめまして!
      コメントありがとうございます。そのように思っていただけてとてもうれしいです!
      「近くのお店に負けない美味しいマラサダを作る!」すてきな目標ですね。応援してます!
      パン作りでお困りごと等あったらいつでもコメント・お問い合わせくださいね。
      これからもパン作りに役立つ情報を発信していくのでよろしくお願いします。

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