グルテンって何?パン作りとの関係は?を分かりやすく図解

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本記事では、パンに欠かせない小麦粉のグルテンについて、次のような疑問をやさしく図解します:

 
グルテンって、そもそも何?見えるの?触れるの?
グルテンって、どうやって作るの?
パン作りとどう関係するの?
 

グルテンは小麦粉のたんぱく質です。パン作りにおいて、グルテンはパン酵母が発酵活動で作った、発酵ガスを包み込む風船のような役割をしています。グルテンとパン酵母(発酵)のチームワークで、ふくらんだパンが焼けるため、パン作りでは欠かせません。

本記事では、普段は生地の中にいるグルテンを採取して、その見た目や感触、パン作りを作る上での注意点などなど、解説していきます。それでは、さっそく見ていきましょう↓↓

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目次

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0.グルテンがざっくり分かる図 

 

グルテンについて、ざっくり知りたいという方は、この章の図を見て頂けたらOKです。本記事の内容がちょっと細かいので、最初にポイントを解説します:

ポイント
グルテンは、小麦粉のたんぱく質こねて形成されます。グルテンの特徴としては弾力性と粘性(伸び)があるゴムのような性質があること、そして網目の形をしていることです(網目構造)。発酵後の生地が膨らんでいるのは、グルテンの網目に、発酵ガスが包み込まれると同時に、グルテンの網目もどんどん引き延ばされていくため。このため、グルテンはパンの骨格と表現されます。

グルテンの網目構造は、細く伸ばして、複雑に絡まるほど、弾力が増し、しっかりつながった生地にするため、パン作りの工程は、グルテンを伸ばして絡めて、伸ばして絡めてを繰り返す作業となります。
弾力性と伸展性を兼ね備えた、つながった生地を作ることで、焼いたときに、ふっくら伸びる、ふわふわのパンになるのです。
 

以上がざっくりとした概要ですが、さらに詳しく知りたい方は、このまま読み進めてくださいね↓↓

 

1.グルテンは、小麦粉のたんぱく質 

 

グルテンは、パンの主原料である小麦粉のたんぱく質が、水と合わさり物理的な力(こねる)が加わることで生成されます。

小麦粉中には、複数のたんぱく質がありますが、もっとも含有量が多い、グルテニングリアジンという2つのたんぱく質が、水と捏こねられることでグルテンになります。


ちなみに、強力粉には、たんぱく質がおよそ10%含まれていますが、その内訳は次の通りです:
①グルテニン:4.7%
②グリアジン:4.0%
③その他のたんぱく質(アルブミン、グロブリン、プロテオーズ):1.2%

小麦粉のたんぱく質は、グルテンを構成するグルテニンとグリアジンの割合が高いのがわかります。
※小麦粉の種類や産地などで、たんぱく質の含有量はちがってきます。

1-1. グルテンを構成する、グリアジンとグルテニンの性質

 

グルテニンとグリアジンは両方ともたんぱく質ですが、性質が大きく違います。

グルテニンは、弾力性があるので、グルテンに硬さを与えます(コシ)


グリアジンは、粘性があるので、よく伸び、結合剤として働きます(アシ


この2つが水を介して結合することで、グルテンという分子になり(下図)、ゴムのような伸展性と弾力を兼ね備えた生地ができるのです。そして、この2つのたんぱく質を兼ね備えた穀物は、小麦粉だけなのです。
※ちなみに、グリアジンはライ麦にもあります。

1-2. だから、パンには強力粉を使う

 

パン生地作りにはグルテンが必須、そしてグルテンは小麦粉特有のたんぱく質です。米粉やライ麦粉だけで作った生地は膨らみません。米粉で作ったパンも、小麦粉とブレンドされていたり、グルテンを添加して作っているものもあるので、アレルギーの方は注意してくださいね。

さて、小麦粉といっても種類も多種多様です。私たちに一番身近な小麦粉は、薄力粉や強力粉、中力粉、準強力粉などなどだと思いますが、それぞれの大きな違いは、たんぱく質の含有量です。

製パンに適している、準強力粉と強力粉はたんぱく質が10%前後ですが、お菓子作りに使う薄力粉は8%ほどです。わずかな差ですが、薄力粉のたんぱく質量では、パン生地作りに必要なグルテンがを形成できません。なので、パン作りでは強力粉か準強力粉を使うのです。

 

 

2.グルテンは、パンの骨格 

 

グルテンはよく、パンの骨格という表現をされます。建物でいうと鉄筋部分です(コンクリート部分はでんぷん)。そしてグルテンの鉄筋は、網目構造をしています↓

2-1. グルテンの網目構造について


グルテンは、ミキシングでたんぱく質(グルテニンとグリアジン)が水と捏ねられることで形成されます。そして、グルテンは、2つのたんぱく質の性質である、伸びと弾力をあわせ持ったゴムのような性質をもった分子です。

グルテン分子は、生地内で集まる(凝集する)という特性があり、生地内で固まりをつくります。この固まり(グルテン凝集物)は網目構造をしていて、網目(建物でいう鉄骨)の中にでんぷん(建物でいうコンクリート)やパン酵母が包み込まれており、発酵活動を進めていきます。そして、パン酵母が発酵活動で生成した発酵ガスが、網目の間に気泡として保持されることで、パン生地が膨らみます。

下図の緑の部分が、グルテン(グリアジンとグルテニンがくっついたもの)で網目の形をしています。



2-2. グルテンがあるから、パンが膨らむ


ミキシングで、生地中に取り込まれた空気や、一次発酵、ベンチタイム、最終発酵でパン酵母が生成した発酵ガスなどは、生地中の水を介して気泡の中にたまっていき、網目構造の中に抱えこまれます。抱え込みつつ、どんどん生成される発酵ガスの圧で、グルテンの網目もどんどん伸びていきます。だから、パン生地は膨らむのです。

パン酵母が発酵していても、発酵ガスをキャッチするグルテンがなければ、パンは膨らみません。グルテンの強度と、パン酵母の発酵力の連携とバランスが重要です。

下図は、グルテンを風船に例えたイラストです。グルテンに十分な強度がある場合は、パン酵母が生成したガスをしっかり保持することができ、生地が膨らみます。

しかし、グルテンのつながりが弱いと、下記のように、パン酵母のガスを保持することができず、生地は膨らみません。そのため、グルテンをミキシングでしっかり作り、その後の工程でグルテンの弾力性と伸展性を育てて焼成まで繋いでいくことが重要です。

 

2-3. ミキシングで、グルテンを形成する


グルテンは、ミキシングにより物理的力を加えることで、形成されていきます。その後の工程でも、グルテン結合は調整できますが、ミキシングで決めることが重要です。毎回、同じ状態で捏ね上げることができれば、あとの工程もスムーズにいきます。

グルテンの結合具合は、ミキシングが進むごとに変化していきます。ミキシングの初期は、グルテンはまだ固まりの状態でつながりが弱いため、生地を触ると、ぼそぼそしています。

しかし、こねていくことで、グルテンの固まりがどんどんほぐれ、どんどん伸びていき、からまり、やがて薄い膜ができるようになります。(食パンや菓子パンなどは、この状態になるまで、ミキシングをします)


下の写真からも、こねた後のほうが、グルテンが細く伸びていて、よりつながっていることがわかります。これがパンの骨格の正体です。そして、作りたいパンに応じて、ミキシングでしっかりグルテンをつくることが重要なのです



出典:日本パン技術研究所 製パン技術資料No.772

さらに詳しく:パンの骨格について
パンが生地の状態のときは、グルテンが骨格となり、パンの形を支えています。しかし、焼成することで、グルテンはでんぷんと選手交代し、焼きあがったパンの骨格はでんぷんが支えるようになります。これは、熱が加わると、たんぱく質が熱変性(凝固)を起こし、でんぷんがアルファ―化(糊化)するという変化が起きるからです。
 

※余談ですが、ミキシングをし過ぎてしまった場合(オーバーミキシング)は、今度はグルテン構造が引きのばされすぎて、切れ始めます。そのため、伸びるけど、べたべた(グリアジンの粘性が目立つ)し、さらにミキシングを続けると、最後はドロドロになります(この段階まで来たら回復不可)。

☞あわせて読みたい
【オーバーミキシングについて:】
イースト(発酵)とグルテンの関係【発酵で食感がどう変わるのか】
 
 

2-4. グルテンとパン作り:伸びて絡まり強くなる


ミキシングで形成されたグルテンはその後、一次発酵(フロアタイム)、(パンチ)、分割・丸め、ベンチタイム、成型、最終発酵(ホイロ)などの工程を経て強化されていきます。これらの工程を通じて、グルテンを伸ばしては絡ませるという作業を繰り返していくのです。

ミキシング後のグルテンは、まず一次発酵で伸ばされます。パン酵母の持続的な発酵活動により、発酵ガスがどんどん生地中に生成されていき、網目の間の気泡にたまっていきます。たまっていくと、やがて発酵ガスで気泡の内圧が高まり、グルテンの網目が押され、細く伸びながら絡まっていきます。


グルテンは、伸びて、絡まれば絡まるほど、網目が細やかになり、生地の弾力性が増し、しっかりつながります

一次発酵の途中にあるパンチや、一次発酵後の分割・丸めでは、生地をたたんだり、切ったり、丸めたりすることで、一度グルテンに包み込まれている気泡を抜きながら力を加えることで、グルテン結合(絡まり)を強化しています。その後のベンチタイムでは、再び発酵でグルテンを緩め、つづく成形で絡ませ、最終発酵で緩ませます。これにより、焼成のさいに生じるガスの膨張に耐えられる強度と伸展性をもった生地ができ、ダレたり割れたりせずに窯伸びするのです。

さらに詳しく:加工硬化と構造緩和について、パンの工程は、ゆるめてしめての繰り返し
生地に力が加わる、ミキシング、パンチ、分割・丸め、成形は、加工硬化の工程で、逆に、生地を発酵させたり休ませる一次発酵(フロア)、最終発酵(ホイロ)、ベンチタイムを構造緩和といいます。パンの工程は、生地に力を与えて(グルテンを絡ませ)緩ませる工程(グルテンを発酵ガスで伸ばす)を繰り返すことで、グルテンを育てていきます。
 
☞あわせて読みたい
【加工硬化・構造緩和について:】
パンの作り方:計量から焼成まで【基本の工程をやさしく図解】
 

2-5. グルテンの具合がパンの食感になる


ミキシングから最終発酵までの間で、グルテンが強化されることが分かりました。では、グルテンの伸び具合や、絡まり具合は、焼きあがったパンと、どう関係するのでしょう?なぜ、パンの工程でグルテンの具合を調整するのが、重要なのでしょう?

それは、グルテン=パンの食感を左右する重要な要素だからです。

食パンや菓子生地は、たんぱく質量の多い強力粉(や超強力粉)を使い、うすーい膜ができるまでミキシングします。そして、パンチや丸め、成形は生地をしっかり張らせながら行います。そのため、ミキシングでグルテンが細く伸ばされ、パンチや丸め、成形で、しっかり絡まっているため、グルテン結合が密です。焼きあがったパンの断面は、キメが細かい気泡が多くふわふわで、グルテン膜が薄いためくちどけが良く、皮の部分も薄くソフトです。絡まりが強い分、引きがでることも。

一方、バゲットなどいわゆるハード系のパンは、準強力粉を使い、薄すぎない&均一すぎないグルテン膜ができたら、ミキシングを終了します。十分に発酵させ、分割や成形でも大きいガスはしっかり抜きますが、ぎゅうぎゅう成形はしません。ダレない程度に生地を張らせます。

また、同じ材料でパンを作ってもグルテンの弾力性がちがうと、仕上がりもまったく違ってきます。ミキシングが不足していれば、グルテンの弾力も弱いので、せっかくパン酵母が生成したガスを保持できず、膨らみにくく、小さくてつまった仕上がりになります。一方、ミキシングし過ぎて、さらに発酵過多で伸びきったグルテンは、焼成時のガスの膨張に耐えられずに、穴あきの原因となってしまいます。

グルテンの具合を調整することで、焼きあがったパンの食感を調整できるのです。パンのおいしさは、香りや色や味などで総合的に感じるものだけど、作るパンに応じて、おいしいと思える食感になるよう、グルテンを育てていけるようになれるといいですよね。

☞あわせて読みたい
【アンダー・オーバーミキシングについて:】
イースト(発酵)とグルテンの関係【発酵で食感がどう変わるのか】
【過発酵とグルテンについて:】
過発酵とは【生地の特徴・原因・過発酵を防ぐには・対処法】
【食パンの網目構造の違いがわかる写真:】※外部リンク
コムギ「生地からパンへ」
 
 

 

3.グルテンを抽出してみよう! 

 

グルテンについて分かったところで、実際に生地を作って、グルテンを抽出して、体験していきます↓↓興味のある方はぜひ実験してみてくださいね、「これがグルテンかぁ!」と感動するかも。

3-1. やり方

  1. 100g の粉に、60%の水(26℃)を加え捏ねる
  2. 捏ねあがった生地の重さを計る
  3. 捏ねた生地を30分間水につける
  4. 白濁色がなくなるまで、もみ洗いする。
  5. もみ洗いして採取できたグルテンの固まり(湿麩)の重さを計る

    【※4.について補足】
    もみ洗いですが、下写真のような白濁色から、透明になるまで(時間で15分弱)洗いました。


      ⇩

      ⇩
    【こんな感じで、水が透明になったらもみ洗い終了しましたが、実際洗ってみると、やめどころが難しい】
     



    条件
    今回は、3つの条件の生地をつくり、グルテンに違いがでるのかを検証しました。捏ねるのは、機械の力(キッチンエイドのハンドミキサー)をかりました。

  1. よく捏ね条件
    強力粉の生地を表面がなめらかになるまで、よく捏ねる
    捏ね時間:キッチンエイドで5分→手での叩きごね200回)
  2. まとめた条件
    強力粉の生地をまとめるだけ
    捏ね時間:キッチンエイドで3分、まとめるため20回ほど手でこねた
  3. 薄力粉条件
    薄力粉をよく捏ねる
    捏ね時間:キッチンエイドで5分

3-2. 結果と比較表


詳細に入る前に、先に結果をお伝えします:

ごらんの通り、見た目も抽出量もぜんぜん違う結果になりました。まずはそれぞれの条件から、どの程度グルテンが抽出できたのかを見ていきましょう↓

条件 捏ねあがりの生地の重量 もみ洗い後のグルテンの重量 湿麩%(グルテン)
①よくこね条件
(強力粉)
140g 39g 27.8%
②まとめた条件
(強力粉)
155g 47g 30.3%
③薄力粉条件 153g 21g 13.7%

まず、①②の強力粉と比べて、③薄力粉条件のグルテン量がかなり低いことが分かります。個人的には、一番よくグルテンが形成されている①よくこね条件が、一番グルテン量が多いとおもいましたが、②のまとめた条件のほうがやや多めという結果に。ただ、写真を見ると、表面のぼこぼこは、まとめた条件のほうが粗く、しっかり捏ねたものが圧倒的になめらかなのが分かります。

グルテン採取量については、もみ洗いが影響している可能性があります。一応、水が透明になるまで洗うという基準でやっていましたが、実際洗ってみると止めどころを決定するのは難しかったので、多少結果に影響している可能性があります。どうでしょう。

次に、感触と見た目を比較していきます:

条件 見た目 触った感触
①よくこね条件
(強力粉)
なめらか ・つるつる、
・弾力もあるが、チューイングガムのようによく伸びる
・均等な膜薄になる
・弾力<伸展性
②まとめた条件
(強力粉)
ぼこぼこ ・むぎゅっとしている
・弾力性が強い
・ゆっくり伸ばすとよく伸びるけど、弾力が強いので戻る力のほうが大きい
・薄膜だが、グルテン膜はまばら
・薄く伸ばすのに条件①より力がいるが、力を入れすぎると微妙に膜が裂けやすい
・弾力>伸展性
③薄力粉条件 ぼこぼこ ・ぐにぐに
・捏ね上げ直後は弱くすぐ切れる
・少し置くと、弾力が多少出てくるが、伸ばそうとするとすぐ切れてしまう
・弾力>伸展性


小麦粉で作ったものは、やはり一番切れやすかったです。そして、強力粉に関しては、上記の写真の通り、なめらかになるまでよく捏ねた生地から採取したグルテンのほうが、素直に伸び、膜も均等でうすいのがわかります。

それでは、次はそれぞれの条件の詳細を見ていきましょう↓

 

3-3. 条件①強力粉の【よく捏ね条件】のグルテン


■捏ね時間は、キッチンエイドで5分、たたみこね200回し、表面がなめらかになるまでこねました。

【捏ねあがり】


【捏ねあがり重量】140g

【もみ洗い後重量】39g (生地量の27.8%)

【見た目・感触など】
伸展性も弾力性もあり、グルテン膜はうすく均等。見た目もなめらか。噛んだ後のチューイングガムのよう。

3-4. 条件②強力粉の【まとめた条件】のグルテン


■捏ね時間は、キッチンエイドで3分、まとめるため20回捏ねた

【捏ねあがり】表面はまだごつごつ


【捏ねあがり重量】155g

【もみ洗い後】47g (生地量の30.3%)

【見た目・感触など】表面の見た目は、①よくこね条件よりもぼこぼこしている。伸ばすと戻る力が強く、弾力性のほうが伸展性よりも強いです。

 

3-5. 条件③【薄力粉条件】のグルテン


■捏ね時間は、キッチンエイドで5分

【捏ねあがり】どろどろ

【捏ねあがり重量】153g

【もみ洗い後】21g(生地量の13.75%)

【見た目・感触など】ぐにぐにしている。見た目はぼこぼこ。伸ばすとすぐにちぎれてしまう。伸展性より、弾力性のほうがつよい。

 

★おまけ【オーバーナイト法とグルテン】


以前こちらのオーバーナイト法の記事を投稿しましたが、今回せっかくなので、採取したグルテンで実験してみました。条件②の生地をまとめただけの生地から採取したグルテンを、24時間冷蔵庫でやすませました。その結果がごらんのとおり。



グルテンは力を加えることで、結合が強くなりますが、寝かせておいても、グルテンネットワークを作っていきます。オーバーナイト法もですが、ハード系パンの製法で用いられるオートリーズも、このグルテンの性質を活用した製法です。

 
 

 

4.グルテンが苦手なものから考えた、パン作りの注意点

 

グルテンは、発酵で伸ばして、力を加えてからませることで強くなることがわかりました。次は、苦手なもの、グルテンをもろくする要因を見ていき、パン作りをする上での注意点を考えていきます。

グルテンをもろくする4つの要因:

  1. イースト(パン酵母)が生成する炭酸ガス(二酸化炭素)が過剰
    炭酸ガスが過剰だと、グルテンの網目が必要以上に細く、細く、細く引き伸ばされ、もろくなってしまいます。
    発酵オーバーにならないよう、発酵中は生地の膨張率を確認するのがポイント。

  2. イースト(パン酵母)が生成するアルコールが過剰
    アルコールはグルテン構造をもろくする作用があるので、上記1と同様、過発酵になるのは避けたいです。

  3. 発酵にともなう、生地のpHの低下
    発酵すると生地のpHは下がります(酸性に向かう)。過発酵を防ぐのはもちろんですが、ライ麦が入った生地は酸性に向かうスピードが早くなるので、発酵時間も短めが安心です。

    下の写真は酢をかけた後のグルテン。一定までは、グルテンの伸展性が増しますが、次第にどろどろになり、伸展性も弾力もなくなります。
     




  4. 38~40℃の高い温度
    熱で一度破壊されたグルテンは、そのあと何をしても復活しません。そのため、ミキシング時(特に夏場)は捏ね上げ温度が上がり過ぎないよう気を付けましょう。また、ホイロの温度も必要以上に上げないように。

    ちなみに、こちらの写真は、①よくこね条件のグルテンです。これに、40℃のお湯と熱湯をかけて、グルテンの様子をみてみました。

    【お湯をかける前】

    【40℃のお湯をかけて置いたものです。感触としては、伸展性が増し、かなり膜薄ですが、上記膜と比べると、まばらになっています↓】

     

☞あわせて読みたい
【グルテンが苦手なもの:】
イースト(発酵)とグルテンの関係【発酵で食感がどう変わるのか】
 

 

5.まとめ

 

  1. グルテンは、小麦粉のたんぱく質(グルテニンとグリアジン)と水が捏ねられることでできる、ゴムのように伸びて弾力がある、網目の形をした分子が、集まった固まりです。

  2. グルテンの固まりは力を加えると、細く伸びて、絡まります。この絡まった網目(グルテンネットワーク)がパン生地の骨格を支えています。

  3. 最初のミキシングで、グルテンのつながりを決めるのが重要です。

  4. パン酵母が発酵で生成した発酵ガスは、網目構造の間に包み込まれていきます。そして発酵ガスがどんどん網目内にたまっていくことで、気泡の内圧がたかまり、網目が押され、伸ばされ、絡まります。なので、発酵が進むにつれ、生地がどんどん膨らみます。

  5. ミキシングで形成したグルテンは、発酵時間やベンチタイムで緩まって伸び(構造緩和)、その他の工程では力が加わることで、絡まり、結合が強化され、弾力が増していきます(加工硬化)。ほどよく伸びて弾力のあるグルテンを作ることで、焼成時にパンがふわっと窯伸びします。作りたいパンに合わせて、グルテンの具合を調整するのがおいしさに繋がります。

 

最後に…

 

本記事では、グルテンについて詳しく解説していきました。いままで、パン作りの色々な記事を投稿してきましたが、そういえば肝心のグルテンについて書いていないと思い、今回まとめてみました。パン作りの魅力のひとつは、発酵で生地が膨らんだりするのを感じながら生地を作って、焼いていくことだと思っています。それでは、今日もパン作り楽しんでください:)

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コメントお待ちしてます!

コメント一覧 (4件)

  • 早速「湿麩」を食パン用強力粉に吸水率60%で行ってみました。
    ブログにも書かれている通り、止め時が難しいと思いました。
    出来上がったグルテン量は、元の小麦粉と水の総量に対して28.3%でした。
    これを1/3ずつに分けて、一つはそのままラップに包み、次は砂糖8gにまぶしてからラップに包み、最後の一つは食塩2gにまぶした後にラップに包み、1時間室温でねかせました。
    結果、砂糖を加えたものが15.6cm、そのままのグルテンが14.0cm、食塩を加えたものが10.8cmでした。
    不思議なのは、砂糖をまぶしたグルテンが黄色く変化したことです。
    この現象をインターネットで調べましたがわかりません。
    もしご存じであればご教示ください。

    • コメントありがとうございます!また、実験結果についてシェア頂きありがとうございます。砂糖と塩をまぶすと、グルテンへの影響(伸展性を向上させる・引き締める)がはっきりわかりますね。砂糖をまぶしたグルテンの黄色への変色については、なぜでしょう…不思議ですね。知らない現象がまだまだたくさんあっておもしろいと思いました。わたしも試してみたいと思います。

  • そうですね、かん水などアルカリ性の物質を加えると「小麦粉中のフラボノイド色素」を黄色く変化させるのはわかるのですが、何故砂糖でこのような変化が生じたのか不明です。ちなみに使用したのは一般的な上白糖でした。

    • アルカリ性による小麦粉中の成分への影響により、麺は色が黄色くなると読んだことがあります。わたしも本やウェブを調べてみましたが、該当しそうなものはまだ見つかっていません。気になりますね

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